20200802_評価より承認と感謝

 

1.部下からの報・連・相を「歓迎」しているか?

 

 ある管理職は、報告であれ、連絡であれ、相談であれ、部下が自分の部屋に「ちょっといいですか?」と言いながら入ってくるときに、「良いよー!」と言うのを口ぐせにしていました。部下にとっては「モノが言いやすい」上司だと思えたことでしょう。

 

 上司が部下を評価しようとする前提として、両者の間に、例えば上記のような「モノが言いやすい」関係が必要であり、必要な報告・連絡・相談による組織の情報の流れが、人体で言えば血液のように、何の滞りもなく通い合う関係性が必要です。

 

2.部下への期待感を伝えているか?

 

 組織マネジメント(人と組織を通じて事業の目的や価値を実現するということ)のためには、組織マネジメントを担う者が、何が達成すべき目標であり、実現すべき価値であるかを分かりりやすい言葉(コンセプト)で表現することが必要です。

 

 例えば松下幸之助は「モノをつくるんやのうて、ヒトをつくりなはれ」と言ったと伝えられています。(ちなみに、同氏はその他にも、「人事異動を考えるときはいく晩もその人のことを考える」と言ったそうで、その言葉は今でも筆者の指針になっています。)

 

 人事評価は、例えばそうした言葉で表現されるその組織の目的や価値に沿った構成員への期待感(「こうしてほしい」「こうあってほしい」)を基準に行われるべきものです。(その意味で「評価基準が明確でない」組織は「目的や価値が明確でない」組織です。)

 

 もちろん「モノを作るより人を作れ」という理念だけで全てが明確になるわけではなく、そうした理念は、例えば人事評価の要素を「行動・能力・成果」とするならそれらを具体化する際の心強い指導理念になり得ます。

 

3.部下をRespect(尊重)しているか?

 

 また、人事評価「以前」の問題として確認すべきことは、上司(評価者)と部下(被評価者)が相互をRespect(尊重)しているかどうかということです。およそ相互間にRespect(尊重)の関係性が無ければ、評価の信頼性も妥当性も納得性も成り立ち得ません。

 

 部下を呼び捨てにしたり、雑用係のように使ったり、挨拶もろくに返さない、有難うのひと言も無い…というような上司のビヘイビアが、部下からのRespectを得るはずがありません。部下をRespectできないなら、いち早くその地位を辞すべきです。

 

4.「人事評価」は「evaluate」か?

 

 「人事評価」を英訳すると「Personnel evaluation」ですが、これはさらに和訳すると「査定」という意味でしょうか。これは何らかの「尺度」を、何か(人事評価の場合は、例えば人の行動やスキルや成果)に当てはめて測定するという意味でしょうか。

 

 しかし、身長や体重を測るのと同じようには、また学校の成績評定と同じようには、企業活動における人の行動やスキルや成果を測ることはできません。それは次のようないくつかの点においてです。

 

① あらかじめ絶対的な「尺度」があるわけではないから。

 

… 人事評価に「メートル原器」や「キログラム原器」や、あるいはそれらに代わる何らか

 の絶対的な「尺度」があるわけではありません。「尺度」があるとしても、例えば「こう

 してほしい(こうであってほしい)」という「期待感」でしかありません。

 

② 求められているのは「解答」ではなく「解決」だから。

 

… 学校の試験なら「試験問題」が「問題や課題の全て」ですが、企業活動における「問題

 や課題」は「考え得る諸現実や諸状況や諸条件の全て」です。求められるのは一問一答式

 の「解答」ではなく「現実的な問題や課題を発見してそれを解決すること」です。

 

③ 現実には「定量化」しきれないもののほうが多いから。

 

… 例えば「目標管理」における「目標」をあらかじめ「定量化」したり「データ化(ゼロ

 イチ化)」できれば「目標達成度評価」がずいぶん単純明快になりそうですが、スーパー

 コンピューターでもないかぎり現実には無理です。

 

④ はっきり言ってしまえば「人事評価」は「主観的」なものだから。

 

… 裁判は客観的な事実(証拠)に基づいて行われこそすれ、それをどう評価するかは裁判

 官の心証次第であり、しかも、少なくとも民事裁判では、「正しい判決」よりも「納得の

 行く和解」によって「解決」がもたらされます。

 

  人事評価も日常的な記録と観察と指導に基づいて行われこそすれ、それに基づいてどの

 ような評価を行うかは、評価者の権限と責任に属する事項です。人事評価に期待されるべ

 きは、必ずしも「客観性」ではなく、「信頼性・妥当性・納得性」です。

 

5.人事評価とはむしろ「appreciate(感謝)」や「approve(承認)」ではないか?

 

① コミュニケーションとモチベーションを伴わない人事評価の弊害

 

… 目標管理も人事評価も、ともにコミュニケ―ションとモチベーションのしくみです。コ

 ミュニケーションとモチベーションを伴わない目標管理は単なるノルマ主義、コミュニケ

 ーションとモチベーションを伴わない人事評価は単なる選別主義に脱します。

 

② フィードバックを通じた動機付けと成長の促進こそ人事評価のいのち

 

… フィードバックこそ人事評価のいのちです。高い評価や肯定的な評価をフィードバック

 することは比較的容易ですが、低い評価や否定的な評価をフィードバックして被評価者の

 動機付けや成長促進につなげることはより困難であり、より重要です。

 

③ 人事評価はむしろ、「appreciate(感謝)」や「approve(承認)」ではないか?

 

… 低い評価や否定的な評価をフィードバックして被評価者の動機付けや成長促進につなげ

 ることが必要であるとしたら、「尺度で測ってその値を伝える」式のフィードバックでは

 無理です。

 

… もちろん、不法・不当・危険な言動や態度は、その場で禁止しなければなりませんが、

 そうしたことであってさえ、あらかじめ、そうしたことがなぜ不法・不当・危険なことで

 あるかを十分に伝えておく必要があります。

 

… また、本人がどのような状況や理由や背景で、そうした不法・不当・危険を冒したのか

 についての観察と理解が必要ですし、その場で即刻行うべきことは、そうした不法・不当

 ・危険な言動や態度の禁止であって、それを行った本人への非難ではありません。

 

… 不法・不当・危険なことのほかに、その事業や組織の目的や価値に反することや組織の

 協働性や構成員の成長に反することに対しては、否定的な評価を行い、それを被評価者の

 気付きと動機付けと成長につながるようにフィードバックしなければなりません。

 

… そのように考えると、やはり「人事評価」の基礎には、「基準へのあてはめ」のほかに

「appreciate(感謝)」や「approve(承認)」がなければならないでしょう。「泣いて馬謖

 を斬る」の「泣いて」の部分に含まれるものの一部でしかないかも知れませんが。

 

<追記_20200820>次の「エピソード」は何を言い表しているでしょうか?

 

 美空ひばり:あたしさあ、さゆりちゃんのファンだから言うけど、あの唄のあそこは、

       例えばもうちょっとこういうふうに~♪~唄ったら、お客さんたちはも

       っとグッとくるんじゃないかと思うのよね~

 石川さゆり:あっ、ありがとうございます!!!

 

 *何をもって「評価の尺度」とするか?

 *評価とそのフィードバックとはどのようなものか?

 *それは誰が誰に行うべきことか?

 ******