20151125_無理、でしょうか?

 

1.「それは無理だ」と言った人

 

 拙著のテーマは大まかに言えば「人事マネジメント」と「メンバーシップ」のふたつです。いずれも特に困難を極める大問題とまでは言えず、企業の人事管理の実務経験をふまえて筆者が編み出した「考え方と処し方」です。

 

 そんな筆者のレクチャーを聞いて、ある年配の管理職がひと言「それは無理だ」とつぶやいたことが、今でも筆者の耳に残っています。「無理…」そう言う管理職氏の脳裡にはきっと筆者とは異なる「現実像」が浮かんでいたのかも知れません。

 

 察するに、「そうは言っても、頭では分かっても、現実にそれを人と組織に対して行うには、当該現実の人と組織の実態、とくにその文化的・社会的なレベルや態様に照らして無理がある。」という趣旨だったのでしょう。

 

2.当たり前のことの習慣化は「無理」では済まされない。

 

 しかし、どのような人と組織であっても、どのような文化的・社会的なレベルや態様であっても、それは構成員たる一人ひとりの人間がいくつかの選択肢の中から日常的・現実的に選択した思考や言動の結果であるはずです。

 

 例えば、指示命令を受けて仕事をしたら、どんな仕事でも指示命令者に「報告をする」か「報告しない」かは、日常的・現実的な言動上のごくありふれた選択のひとつであり、何ほどもない簡単で些細なことです。

 

 しかし、それを個々人の日常的・現実的な仕事上の習慣として当たり前化する、しないでは、おそらく組織の機能そのものが大きく異なってくるはずです。件の管理職氏は、この習慣化(当たり前化)を「難しい」と言ったのでしょうか?

 

3.「無理だ」「難しい」「厳しい」が口癖の管理職は度し難い。

 

 筆者は「企業風土の刷新」などと、抽象的で大それた(したがって非現実的な)ことを説くつもりは全くありません。それは文字通りの「無理」であり、もし先の管理職氏がそれを「無理」と言ったのなら全く同感です。

  

 しかし、日常的・現実的な仕事の上で「報告をする」という選択をするように、構成員を方向付け、動機付け、習慣付けることは「絶対に無理なことではない」と言い切れますし、それによる「企業風土の転換」は数年内に可能であると信じます。

 

 それを「無理」と言うなら、本来発揮すべき管理職としての機能の発揮自体を「無理」と言っているのに等しいと、筆者は思います。 「企業風土の刷新」などと、空疎な念仏を唱えて仕事をした気分になるより、足元の習慣をひとつでも変える努力をすべきです。

 

<追記_20160821>

 

 先日、筆者に向かって「それは無理だ・・・」と言った件の管理職に再会したので、「どうですか?」と訊いてみたら、今度は、「それは未だ早い・・・」とおっしゃいました。また、別の管理職は、「それはちょっと厳しい・・・」と言って何もしないのが未だに習慣です。