20170908_人と組織を通じて仕事をする

 

1.自分ひとりではほとんどどんな仕事もできない。

 

 いくら有能でも少なくとも企業という組織協働体で仕事をしようとするなら、「自分ひとりでできる」仕事の範囲や成果はきわめて限られており、ほとんどの仕事は、仕事を通じて関わる多くの人たちの理解と協力無しには実現もできず成果も出ないと思います。

  

 上記のようなことを、筆者は「人と組織を通じて仕事をする」と表現していますが、ではそのためには何が必要かと言えば、それは例えば人への方向付け(オリエンテーション)であったり、動機付け(モチベーション)であるわけです。

  

 それはまさに「人事マネジメント」や「組織マネジメント」の主要課題であり、組織や職場の管理監督職の仕事ですが、管理監督職以外の人たちにとっても、「より良い(良く)仕事をする」上では極めて重要なマターであるに違いありません。

 

2.「人と組織を通じて仕事をする」ことの必然性と困難性

 

 マネジメント(特に対人的なマネジメント)とは結局、「人と組織を通じて仕事をすること」であり、人と組織に働きかけて、これを方向付け、動機付け、育成しながら仕事の成果を出し、組織の目的を達成し、価値を実現することです。

 

 しかし「人と組織を通じて仕事をすること」は、現実には言うほど容易なことではありません。機械やシステムとは違って、マネジメントが対象とする「人と組織」ほど、混沌と矛盾に満ち、ときに不合理で御しにくいものはありません。

 

 実はそこにこそ、マネジメントの関心もやりがいも意義も価値もあるのですが、日々日常のマネジメントの第一線では、「自分でやったほうがよほど良い(楽で効率的で完成度も高い)」と思ってしまいがちです。

 

3.「自分でやったほうが良い」というのはマネジメントの放棄

 

 何を言っても理解しようとしない、そのくせ何を言っているか分からない、注意をしても聞き入れない、失敗をしてもそれに学ばない、せっかく仕事の仕方を教え込んだつもりでも、すぐに元のやり方に戻ってしまう…

 

 そんな「部下」にほとほと愛想を尽かし、「もういい、お前は何も考えず何も言うな、全て俺が自分がやる」とばかり「部下」を「機械」や「道具」のように貶めてしまったら…結局それはマネジメントの放棄であり敗北にほかなりません。

 

 「自分でやったほうが良い」という人は、結局、「人と組織を通じて仕事が出来ない」人であり、「自分一人で出来る以上の仕事が出来ない」人です。天才的な発明家か芸術家でもない限り、自分一人がいくら優秀でも、その成果は限られます。

 

4.組織は多くのプロセスのインプットとアウトプットの連鎖

 

 組織というものをひとつの情報処理のモデルと見做すなら、それは多くのプロセスのインプットとアウトプットが連鎖し合う集合体です。個々のプロセスを担うのは一人ひとりの部下であり、インプットとアウトプットは仕事上の情報と成果です。

 

 個々のプロセス(一人ひとりの部下)は、処理能力の特性も容量も個々それぞれ異なり、何を目指しているかというオリエンテーションも、何に動機づけられるかというモチベーションも個人個人それぞれ異なります。

 

 結局、マネジメントとは(特に「人と組織を通じて仕事の成果を出し続け、部下の成長を促進し続ける」マネジメントとは)、「自分でやったほうが良い」という気持ちを抑えに抑えて組織全体の最適連携を生み出す努力以外にはないのです。 

 

5.管理職の四大仕事

 

 管理職の「四大機能(仕事)」は、①Decision(判断し、選択すること)、②Orientation(指し示すこと)、③Motivation(動機付けること)、④Education(人と組織を育てること)であり、決して「何もしない人」でも「何でもする人」でもありません。

 

 管理職の仕事の成果とは、これらの機能(仕事)によって人と組織にもたらされる結果としての価値です。人と組織に対する適切な判断と指示と動機付けと育成が管理職の仕事であり、それによって組織にもたらされる価値の増分が管理職の仕事の成果です。

 

 「褒めもせず、叱りもしない上司は度し難い」とは、前の経団連会長の土光敏夫氏の言葉です。部下を適切に方向付け、動機付け、部下を通じて成果を挙げ続けることこそが上司の仕事であるはずなのに、それさえしない上司はその名に値しません。

 

<追記事項:「上司」とは「何もしない人」でもなく「何でもする人」でもない>

 

①上司は何もしない人ではない

 

 仕事に対する見識も考えも方針もなく、良い仕事をしようとする意思もない。部下に対する指示も支援も配慮もなく、部下を育てようとする意思もない。ただ部下に仕事を「丸投げ」し、「割振る」だけの上司は、いずれは部下や組織から見放されるでしょう。

 

②かと言って何もかも自分でやる人でもない

 

 しかし一方で、仕事を抱え込み、自分の能力のみが頼りで、部下の言うこと為すことが気に入らず、何でも自分でしないと気がすまないような上司は、結局たいした仕事も出来ず、部下も育たず、何もしない上司と同様に、いずれは部下や組織から見放されるでしょう。

 

③上司は「人と組織を通じて仕事をする人」であり「仕事を通じて人と組織を育てる人」

 

 そもそも組織や企業は何らかの目的を達成し、何らかの価値を実現しようとする人たちの協働体なのですから、「自分では何もしない人」や「何でも自分でする人」は、企業における組織的な協働そのものに向かないのです。

 

 企業における組織的な協働とは、人と人が理解や協力や信頼を相互に交換しながら、共通の目的の達成や、共通の価値の実現のために、自分のアウトプットを相手の最善のインプットにつなげながら、組織としてのゴールにつなげていくことなのです。

 

 上司は、そうした組織的協働の要として、人と組織から、より多くの理解や協力や信頼を引き出しながら、組織の目的の達成や価値の実現に寄与貢献し、同時にそれを通じて人と組織を成長させる人なのです。