20160813_効率的な仕事の進め方

 

1_人によって仕事の効率は何倍も違う。

 

 未だソフトウェアの生産技術が確立していなかったころ、「ソフトウェアの生産性は人によって10倍以上違う」と言われたことがありました。ソフトウェアの生産という仕事の効率には、作り手の、より多くの人間的要素が決定的影響を及ぼしていたということです。

 

 大量生産の画一的な製品を除いて、われわれが日常生活でユーザーとして接するいろいろな人の「仕事」の効率も、結局はその「仕事」をする「人」次第だなあと思うことが多いはずです。そのことは視点を「仕事をする」側に変えても同じです。

 

<人によって仕事の効率が異なる要素>

 ① 知識や経験の違い(どうすれば良いかを知っているか、できるか否かの違い)

 ② スキルの違い(正確・迅速・丁寧に、より良い質や量の仕事ができるか否かの違い)

 ③ 態度の違い(誠実・勤勉に、注意深く、責任もって仕事ができるか否かの違い)

 ④ 考え方の違い(何を大切にし、優先するかという価値観の違い)

 ⑤ ソリューション力の違い(制約や問題や障害を克服できるか否かの違い)

 

2_仕事によって効率化のしかたは違う。

 

 仕事には、機械化や自動化によって効率化できる側面と、考え方や進め方次第で効率化できる側面があります。例えば「書類のコピーをとる」という仕事の効率は、コピー機の性能次第であり、同時にコピーをとるという仕事の要否や方法を含めた考え方次第です。

 

 仕事というものを、他律的に命じられ、決められたとおり「作業する」ものとしてとらえ、現にそのように行う限りにおいては、機械的・外圧的要素による効率化は望めても、人間的・内発的要素による効率化はあまり望めないように思えます。

 

 これに対して、仕事というものを、その本来の目的や価値に即して「解決する」「考案する」「工夫する」「改善する」・・・ものとしてとらえるなら(要は「仕事のしかた」が全てだと捉えなおすなら)その効率化の余地は何倍にも拡がるでしょう。

 

 先の「書類のコピーをとる」という仕事を例にとれば、「何のための仕事か(なぜその仕事が必要か)」「その目的を達成するためにもっと合理的で効率的な方法はないか」と考え直せば、もっと良い方法が見つかるはずです。

 

3_「仕事の進め方」によって「仕事の効率」は何倍も違う。

 

 人それぞれの能力や適性によって、仕事の効率は大きく左右されますが、仕事の効率を高める要素はそれだけではありません。以下には、拙稿「仕事のAtoZ」に記載した事項のうち、特に「仕事の効率」にかかわりの深い事項を再掲します。

 

□ Ability (仕事をする能力)

… 決して「専門的能力」だけが仕事の効率を高める能力ではありません。IQ(知的能力、特に論理的能力)は重要ですが、それがEQ(情動的能力)の高さを伴なって発揮されるSQ(社会的能力、例えばコミュニケーション能力)の高さが仕事の効率を高めます。

 

□ Behavior(仕事をする適性や態度)

… 能力適性(上記)だけでなく、資質適性(その人の思考や言動や態度の特徴や傾向。特に組織的協働との親和性)や指向適性(本人が本当にやりたいと思っていること・本人が実際にできることとの重なりの大きさ)が仕事の効率を左右します。

 

□ Cooperation(組織的な協働)

… 特に意識して行動しなければ、人のパワーの発揮度は、「個人別作業」よりも「集団的作業」のほうがむしろ低下します。(集団的サボタージュ)これによる減殺効果を抑制し、「組織的協働」による効果を高めるのがマネジメントの機能のひとつです。

 

□ Development(目標を掲げ、より良く(良い)仕事をしようとする意思)

… ただ漫然と「決められた(指示された)」仕事を「作業」として毎日繰り返すのと、「(明日は今日より少しでも)良い(良く)仕事をしよう」と自らを内発的に動機付けるのとでは、仕事の効率は大きく異なります。

 

□ Education(自分自身から成長を引き出すこと)

… 上記と同じです。「(明日は今日より少しでも)良い(良く)仕事をしよう」とし、「仕事を通じて(技術的にも人間的にも)自らを成長させよう」と自らを内発的に動機付けることができる人は、自らを成長させると共に仕事の効率を高めます。

 

□ Faithful(誠実であり、勤勉であること)

… われわれが日常、仕事をする人々と接して、敬意や感謝を覚えるのは、それらの人々の誠実で勤勉な仕事ぶりです。それは翻って、仕事をする立場のわれわれについても言えることであり、仕事や相手先に対する誠実で勤勉な対応が仕事の効率を大きく高めます。

  

□ Gently Speaking (コミュニケーションの力は仕事の力)

 … 「仕事が上手く行く・行かない」の最大の理由のひとつは、「コミュニケーションが上手くとれるか・とれないか」ということです。「コミュニケーション良く仕事をすること」は、仕事の効率を格段に高めることができます。

 

□ Human Relation (人間関係の力は仕事の力)

… どのような仕事にも「相手」があり、相手は「人間」ですので、その相手との双方向のコミュニケーションに基づく円満なヒューマン・リレーションを築くことができれば、仕事の効率を格段に高めることができます。

 

□ Imagination (イマジネーションの力は仕事の力)

… 目の前の仕事だけを見るのではなく、その仕事の真のニーズや目的に対するイマジネーション、仕事の完成に向けたイマジネーション、仕事の関係先や相手先に対するイマジネーションが働けば働くほど、仕事の効率は高まります。

 

□ Just on Time (仕事の基本①「正確・迅速・丁寧」)

… 「正確・迅速・丁寧」は、効率的な仕事の進め方の基本中の基本です。正確さのためには「自分なりのチェックのしかたを組み込む」こと、迅速さのためには「早いほうにタイミングを合わせる」習慣、丁寧さのためには「相手の視点での最後のもうひと工夫」が必要です。

 

□ Kindness (仕事の付加価値)

… 時間に追われ、不親切で無配慮な仕事ぶりでは、相手に分り難く、使い難く、時間を節約したつもりでも、かえって手戻りの多い(手離れの悪い)仕事になります。相手に渡す前に、もう一度相手の視点で、最後のひと工夫を加えることで仕事の価値も効率も格段に向上します。

 

□ Literacy (文書化のリテラシー)

… 「口頭で済ませる」ことで自分の時間を節約したつもりでも、相手の手間も含めて結局は仕事全体の効率性を阻害しがちです。電子メールを適正・有効に活用することも含めて、文書によるコミュニケーションを習慣付けることは仕事の効率化につながります。

 

□ Management (仕事のマネジメント)

… 仕事のマネジメントとは、課題を解決するために「そこを何とかする」ことであり、限られた資金や時間を「やりくりすること」であり、日常的に「P-D-C-Aを廻す」ことです。働く人々の自律的なマネジメントの質を高めれば仕事の効率が高まります。

 

□ Noblesse Oblige (リーダーシップ) 

… リーダーの資質・能力・態度・言動は、組織協働的な仕事の効率を大きく左右します。メンバーに向かって適時的確にデシジョン、オリエンテーション、モチベーションすることがリーダーの仕事であり、リーダーの仕事ぶりいかんで組織協働的な仕事の効率を大きく向上します。

 

□ Objectives (目標とするもの)

… MBO(Management By Objectives)はノルマ主義ではありません。「働く人々」を「こうありたい、こうありたい、と思うところの状態(=Objectives)」に向けて内発的に動機付けることです。「効率的に仕事をしよう」という思いに内発的に動機付けるのがMBOです。

 

□ Proactive (備えあれば憂いなし)

… 「~ためには」「~ためには」と、日ごろからの入念な備えが効果的で効率的な仕事の要件であり、また、「段取り八分」という言葉が示す通り、むやみに仕事にとりかかるのでなく、あらかじめ設計や手配を尽くしてとりかかるのが効率化への途です。

 

□ QCD (仕事の基本②「品質・コスト・納期」)

… 品質(Quality)が低くては効率を阻害します。コスト(Cost)を無視しては効率が保てません。納期(Delivery)を守るのは当たり前の前提です。品質を高め、コストを抑え、納期を守ることを、日常的な仕事の習慣化することが必要です。

 

□ Report to (仕事の基本③「報告・連絡・相談」)

… 組織協働体にとって情報網は血管であり、情報は血液です。組織協働体の中に生きた情報を流し、生き生きと効率的に活動させるために、適時的確な「報告・連絡・相談」が必要です。「どうしようかなと思ったら報・連・相」「困ったときの報・連・相」の習慣化が必要です。

 

□ Solution (仕事は「作業」ではなく「解決」すること)

… 仕事を、「作業する」ものとしてとらえ、現にそのように行う限りにおいては、内発的な効率化には限度があり、仕事を、その本来の目的や価値に即して「解決する」ものとしてとらえるなら、その効率化の余地は何倍にも拡がるでしょう。

 

□ Thoughtfulness (思慮深さ)

… 「思慮深さ」は、対人関係においても極めて重要な要素です。「仕事をする」うえでも、仕事そのものへの「思慮深さ」や、仕事の相手先や関係者への「思慮深さ」は、仕事の出来に大きく影響し、仕事の効率を大きく左右します。

 

□ Unique (一義性と独自性)

… 「曖昧さ(多義性)」を排して「一義的」に表現することは仕事上のコミュニケーションの効率化、すなわち仕事の効率化につながります。また、「独自性」とは、組織的協働からの疎外ではなく、むしろ組織的協働を前提として成り立つものです。

 

□ Value (仕事を通じて実現する価値)

… 「仕事のしかた」を通じた、より多くの「量」を生む仕事の効率化には制約がありますが、より高い「質」や「価値」を生む仕事の効率化にはそれほどの制約は無いはずです。また、「仕事をする」ことを通じて自分自身を成長させようとする意欲には制約はありません。

 

□ Work Life Balance (こころの健康状態) 

… 「仕事をする」人たちのストレスが高じて自己制御が効かなくなったり、メンタル障害に陥ってしまっては効率を損ないます。また、WorkとLifeがお互いに矛盾したり対立したりしているようでは両者の質も落としてしまいます。

 

□ X-theory (仕方なく仕事をする人)

… 仕事をすること自体に動機付けられない、目標を持たない、学習せず・誤りを繰り返し・元に戻る、協力を惜しむ、言われなければやらない(言われても結局出来ない)・・・というビヘイビアの人が多い組織は仕事の効率が低いはずです。

 

□ Y-theory (自ら進んで仕事をする人)

… より良く(良い)仕事をしようとする、仕事を通じて目的を達成し価値を実現しようとする、仕事を通じて成長しようとする、手間を惜しまず自ら進んで協調(協働)しようとする、自らマネジメントし、解決しようとする・・・というビヘイビアの人が多い組織は仕事の効率が高いはずです。

 

□ Z (まとめとむすび・筆者が伝えたかったこと)

… 上記は、筆者自身の経験に基づく「より良い仕事をしかた」ですが、それらは全て「より効率的な仕事のしかた」に通じます。自動化や省人化だけではなく、「より良い(良く)仕事をしよう」という、人間的・組織的・社会的な協働こそが、効率化をもたらすのです。

 

4.仕事の指示や指導によって仕事の効率は何倍も違う。

 

 上司が部下に「書類のコピーをとる」という仕事を命じた場合を例にとれば、「何のために」「いつまでに」・・・等々の指示を漏れなく行うか、または部下がそれをあらかじめ理解していれば、仕事の効率は高く、そうでなければ低くなります。

 

 仕事を指示する上司の側に、その仕事の目的や意義や価値、方針や目標や成果に関する明確なイメージがなければ、指示は明確さや的確さを欠いて部下の仕事の効率を損ないます。適時的確な観察と指導(コーチング)があれば部下の仕事の効率は向上します。

 

5.結局は「より良く(良い)仕事をする」ことであり、「組織協働的に仕事をする」こと。

 

 結局、「効率的に仕事をする」ということは、「早く仕事をする」ことでも「一人で仕事をする」ことでもなく、「より良く(良い)仕事をする」ことであり、「組織協働的に仕事をすること」であり、一人ひとりが「メンバーシップに則って仕事をすること」です。

 

 また、組織や企業のトップやリーダーが、組織管理と人事管理において、発揮すべき機能を発揮しし(決めるべきことを決め、示すべきことを示し、動機付けや成長を促進し…)、組織や企業のメンバーからより良い「メンバーシップ」をより多く引き出すことです。