20161201_人と組織の最適関係

 

1.人と組織の最適関係と疎外関係

 

 ① 組織とは、何らかの共通的・人間的・社会的な目的を達成し、価値を実現しようとする人たちの協働体であって、人が組織の目的や価値を無視しては組織が成り立たず、組織が人の自由や尊厳を損ねては組織自体の存在意義が成り立ちません。

 

 ② ところで「組織」と言ってもそこに「組織」という実存するわけではなく、そこに実存するのは「組織を構成する人たち」であり「組織的にふるまう人たち」ですので、「人と組織の関係」と言ってもそこに実存するのは結局「人と人の関係」でしかありません。

 

 ③ つまり、たとえば「組織が人を迫害する」という関係があったとしても、それは「組織的にふるまう人が(組織の名のもとで)それ以外の人を迫害する」のであって、「組織」自体が直接的に「人」を迫害するわけではありません。

 

 ④ したがって「人と組織の最適関係」とは同時に「人と人との最適関係」であり、「人と組織の疎外関係」とは同時に「人と人との疎外関係」であって、解くべき課題は「人と組織の関係」にあると同時に「人と人の関係」にあるのです。

 

2.「組織没入」という価値概念

 

 ① 筆者がある韓国系日本法人の人事管理に携わっていたころ、その組織の人事評価基準のひとつに「組織没入」という言葉がありました。おそらく、個人の都合より、組織の事情を優先させる言動や態度や思考や習慣を高く評価する言葉でしょう。

 

 ② たしかに、組織への加入と脱退が真に個人の自由な意思と選択に委ねられており、かつ、組織が達成しようとする目的や実現しようとする価値が真に人間性と社会性に沿ったものである限り、「組織に没入する」ことも良いでしょう。

 

 ③ しかし、仮に「組織」を「軍隊」に置き換えて考えてみるなら、「組織没入」という価値観が、個人の自由な意思を踏みにじり、人間の平和や幸福という普遍的価値を損ねる危険な価値観にもなりうることも明らかです。

 

 ④ 企業という組織の目的は、少なくとも近代資本主義においては「経済的な利益」に還元されてしまっていますが、それは、企業が達成しようとする目的や実現しようとする価値が真に人間性と社会性に沿ったものである限り、という前提でのものであるべきでしょう。

 

3.ひとりの人間として感じ、思い、考え、行うことを諦めてはならない

 

 ① われわれはよく「それが仕事だから」とか「それが組織だから」ということを言い訳や逃げ道にして、ひとりの人間として自由かつ様々に感じ、思い、考え、行うことを、途中で止めたり諦めたりしているような気がします。

 

 ② 国家が戦争を遂行しようとするときに、国民の、ひとりの人間としての喜怒哀楽や、学問や思想や芸術や、意見や表現や活動の自由を、多かれ少なかれ統制しようとし、国民の側もこれに呼応して自らを統制しようとするのが極端な例です。

 

 ③ 現代社会においても、例えば資本主義が人間や人間社会の平和と繁栄と福祉にとって本当に相応しいものかという根本的な感じや思いや考えや行いを、多くの人たちが営利企業において賃労働に服する日常の中で途中で諦めてしまっているような気がします。

 

 ④ 言いかえれば、人と組織の最適関係とは、人がどのような組織にあっても、「人間らしい感じや思いや考えや行いを諦めないこと」だと言えると思います。諦めずに組織を改めるか、諦めて組織を去るかの選択は自由であるとして…