1.「何を言うか」より「どう言うか」が大事
① 思うことと言うことの間には間隔や時間や回路があった方が良い。
人間だれしも心の内には様々な思いが渦巻き、その中には感情的なことや、合理性や倫理性を大きく逸脱することがらも多く、ただそれを言動や態度に表出するまでの間には、人それぞれの距離や時間や回路があって、自他ともに平穏が保たれているのでしょう。
思うことと行うこと(言動や態度、何を言うかよりどう言うか)の間には、適切な間隔や時間や回路があったほうが良い。特に感情的な思いとその表出との間には、相手の立場や感情や視点を含みこむだけの、間隔や時間や回路が必要です。
② 何を言うかより、誰が言うか、どう言うかが大事
また、「何を言うか」より大事なことは、「誰が言うか」「誰に言うか」「いつ言うか」「どう言うか」です。相手に「どう伝わるか」=「何を言うか」×「誰が言うか」×「どう言うか」であり、そのための「修正回路」もいくつかあったほうが良いでしょう。
相手がどのような人であっても、その相手の「自己尊厳」を損なってしまっては、その人とのベーシックな人間関係さえ築きようがなく、それどころか相手は相手自身の「自己保全」をかけて、回避・退行・攻撃などの反応を起こすでしょう。
③ 「ものの言い方」にその人の人格性や価値観や関係性が現れる
同じ内容を伝えるのに「どう言うか(どのようなものの言い方をするか)」によって相手への伝わり方は全く違います。それだけではなく、「ものの言い方」によって、その人の人格性や価値観が図らずも伝わってしまうことがあります。
また、相手との関係性、つまり、その人が相手のことをどのように思っているか、尊卑や好悪の間感情が伝わってしまうことがあります。まさに「ものの言い方」は、その人を映し出す鏡のようなものなのです。
2.<追記事項>「ものの言い方」
① 挨拶と礼儀は誰に対しても分け隔てなく
… 相手と自分との「上下関係」によって挨拶や礼儀を「使い分ける」ことには、今でも違和感があります。(新入社員のころ、本社ビルの役員フロアで出会った役員氏に挨拶をして無視されたことにある意味の「あほらしさ」を感じたのが原体験です。)
やはりどんな相手との関係もリスペクト(Respect)無しには成り立たない、というのが筆者の確信のひとつであり、相手に対する心のうちにあるリスペクト(Respect)の有無は、ほんのちょっとしたものの言い方や態度や表情を通じて確実に相手に伝わってしまいます。
② 感情を上手くコントロールする
… 喜怒哀楽に伴う人の感情の起伏は、まるで池の水面に起きるさざ波のように、風や魚や虫によるほんのちょっとした刺激に対してきわめて微妙に反応するものであり、おそらくそれをいちいちものの言い方や態度や表情に出していては相手も疲れるでしょう。
特に「怒りに任せてものを言う」ことは、そうすることによってさらに自身の怒りを増幅させてしまうことになりがちなので「IQよりもEQが大事」と自らに言い聞かせて、相手と自分の感情を上手く処理しながらものを言うことが肝要です。
③ 否定しない
… 頭ごなしに否定しない、否定から入らない。会話の中に相手やものごとに対するネガティブな要素(ものの言い方や態度や表情)が多ければ多いほどコミュニケーションは阻害され、ポジティブな要素が多いほどコミュニケーションは促進れます。
相手に対して頭ごなしに、またはいちいちネガティブに反応していたのでは会話も進みません。本質的でないことは聞き流し、見のがす」ことも必要です。争いのあることは事実関係を共有し、争点を明らかにし、互譲して和解することが肝要です。
④ 抽象化に逃げ込まない。
現場で生起している現実を知らず、調べもせず、現実と格闘したこともない立場で、「~したほうが良い」などと空虚で抽象的な「あるべき論」を言う人は、単なる「評論家」であって、実務家とは相容れない存在です。
筆者自身、現在でも、事実をよく調べもしないで、仮説をよく検証もしないで、実務的に通用しないもっともらしい抽象論、あるべき論を弄する愚に陥らないように、常に実践の立場から、常に現場の視点から、ものを言いたいと思います。
⑤ あとで批判しない。
軍国主義が去った後に軍国主義を批判するのは簡単です。ひとがものごとに悪戦苦闘している最中には知らぬ顔をしながら、ものごとの成就失敗が定まってから知ったかぶりで批判をするのはたちの悪い評論家でしかありません。
「何を言うか」より「どう言うか」も大事ですが、「いつ言うか」「誰が言うか」「誰に言うか」も大事です。肯定的なことはいつ誰が誰に言っても害悪にはなりませんが、否定的なこと、批判的なことは、時機と立場と相手を弁えるべきでしょう。
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