20180728_マズローの読み解き方

 

1.マズローと言えば…

 

 マズローと言えば「欲求五段階説」で、人事労務管理の議論の多くで紹介・引用されて来ており、勿論、本稿もその例外ではないのないのですが、筆者は少し違う観点で「欲求五段階説」を自分なりに読み解いています。

 

<「マズローの欲求五段階説」のイメージ>

 

 ⑤ 自己実現の欲求

 ④ 自尊の欲求

 ③ 親和の欲求

 ② 安全の欲求

 ① 生存の欲求

 

2.「自己」はむしろ「相互」ではないのか?

 

 いうまでもなく人間は社会的存在であって、「自己」ひとりではその生存さえ維持できない存在です。もちろん「安全の欲求」はなおさらで、「親和の欲求」「自尊の欲求」に至っては「相互の親和と尊厳」以外には成り立ちようがありません。

 

 さらに「自己実現」とは、マズロー自身が掲げたような「人間的・社会的な諸目的の達成や諸価値の実現」であるとするなら、それこそ「相互の親和と尊厳を基礎とする社会的協働」によってこそ達成や実現が可能なはずです。

 

<「マズローの欲求五段階説」の読み替え>

 

 ⑤ 人間的・社会的諸目的の達成や諸価値の実現とそれに向けた成長

 ④ 相互の尊厳

 ③ 相互の親和

 ② 相互の安全

 ① 相互の生存

 

3.組織の「人事労務管理」の視点からの「欲求五段階説」の読み取り方

 

(1)相互の生存や安全さえ維持できない組織は存続に値しない

 

 極端な例でいえば「過労自殺」を生じてしまう組織や企業や職場は、もはや解体的な出直し(それこそ真の「リストラクション restruction」)以外には選択肢が無い、と少なくとも筆者は断じます。

 

(2)相互の親和と尊厳は組織や職場の存立要件

 

  そもそも「組織」とは、何らかの人間的・社会的な目的の達成や価値の実現のために、さまざまな適性や能力を持つ人たちが協働する「場」であり、お互いの理解と協力なしには成り立たない「場」です。

 

 さらにわれわれが「組織」ではなく「職場」と言う場合には、必ずしも経営合理性や目的合理性を徹底した「仕組み」を言うのでなく、そこで「共に生き、とも働く」という、もっと人間的・社会的な「場」の意味が込められているはずです。

 

 そうした「場」が人間相互の「親和」と「尊厳」無しに成り立つはずがありません。「親和」や「尊厳」という価値の上にしか、組織的協働が成り立たず(理解も協力も得られず)持続的な「成果」や「効率」も得られないはずです。

 

(3)相互の目的の達成や価値の実現、それに向けた相互の成長こそ最大の動機付け

 

 ドラッカーは「組織」を次のように定義しています。「共通の目的と価値」とは必ずしも経済的な価値だけではなく、例えば「平和」や「幸福」や「自由」という人間的・社会的な諸価値です。

 

 組織とは…

 ① 共通の目的と価値へのコミットメントを必要とし、

 ② 組織とその成員が必要と機会に応じて適応し、成長し、

 ③ あらゆる仕事をこなす異なる技能と知識をもつ人たちから成り、

 ④ 自ら成し遂げるべきことを他の成員に受け入れてももらい、

 ⑤ 成果は常に外部にあって測定・評価・改善されなければならない

 (「P.F.ドラッカー経営論集」(ダイヤモンド社)より)

 

 人事労務管理(マネジメント)とは、組織や企業や職場に集う人間相互の生存や安全はもとより、相互の親和と尊厳のうえに、相互の目的や価値に向けた成長と協働をいかに多く豊かに引き出すかという考え方であり処し方です。