1.持っている以上の力は発揮できない。
「持っている以上の力を発揮した」という表現は文学的で心情を重視した良い表現だと思いまが、冷徹な人事労務マネジメントの観点からは「持っていない能力は発揮できない」し「普段発揮できていない力が発揮できた」と言い直すべきでしょう。
またある有名なプロのアスリートが「練習以上の結果が出た」と言うのを聞いたことがありますが、本当は「練習以上の結果は出ない(練習で出来ないことは本番でも出来ない)」ことのほうが多いはずです。
さらに「人事評価」における「能力評価」は、あくまで「実際の仕事で発揮された能力」すなわち「顕在能力」や「発揮能力」を評価すべきであって、いわゆる「潜在能力」は評価のしようがないはずです。
2.人の能力は育てるより発揮させる(そうすれば能力は育つ)
「部下が思うように育たない」と悩み、「部下を育てなければならない」と思い込んでおられる上司が多いことだろうと思いますが、筆者の主張は「部下は育てるのではなく育つ」であり、上司の役割は「部下の能力を引き出すこと」です。
組織をマネジメントする(=人と組織を通じて目的を達し、価値を生む)立場の人たちが往々にして「(うちの組織には)人がいない」という意味の発言をしますが、「人がいない、能力が低いと嘆くのはマネジメントの怠慢」です。
現実に人はそこに居るはずですし、現実に人にはそれぞれの能力があるはずです。マネジメントの役割は、それらの人と仕事、仕事と能力を上手く組み合わせ、文字通り組織としての能力を発揮し、成果を生み出すこと以外にはありません。
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