1.今人おおむね口に多忙を説く
今人おおむね口に多忙を説く
その為す所を視るに、実事を整頓するもの十に一二、
閑事を料理するもの十に八、九、
又閑事を認めて以って実事と為す。
宜(むべ)なりその多忙なるや
志有る者、誤りてこの窠(か)を踏むことなかれ。
上記は「佐藤一斎一日一語」(致知出版社)からの引用です。「忙しい」と言う言い訳をするときほど、ものごとの本質も緩急軽重もわきまえず、どうでもいいことや無駄なこと(閑事)に時間を費し、肝心なこと(実事)を後回しにしてしまいがちです。
2.忙しさの壁
誰でも常に一日は24時間しかありません。時間は「有るか無いか」ではなく「どう使うか」です。「忙しい」という言葉は、閑事(やらなくても良いこと)をしない口実にしても良いが、実事(やるべきこと)を怠る言い訳にしてはならない、と筆者は自戒します。
「今ちょっと忙しいから・・・」という言葉は、多忙な母親が子供に言うような言葉であり、うるさい相手を一時的に遠ざける便法のような言葉ですが、意外に仕事のやりとりの中で頻繁に使われているような気もします。
誰でも同時に複数の仕事を抱えているのは当たり前で、それらを上手く処理するには、それぞれの仕事の重要度・緊急度・難易度を軸に優先順位を決め、「タイムシェアリングシステム」よろしく自分の時間と能力をそれぞれの仕事に割り振っていけばよいはずです。
ですから「今ちょっと忙しいから・・・」と無用の雑事を遠ざけるならまだしも、「忙しい」という言い訳をして、本来行うべき仕事を疎かにするようでは、仕事の自己管理(Management)が出来ていないと言わざるを得ません。
また、組織の枢要なポジションにいる人が「忙しい」という個人的な言い訳をして為すべきことを為さず、組織的機能を滞らせることは決して許されないはずです。組織全体から見れば、組織的機能を滞らせる存在を1日も早く取り除く(置き換える)べきです。
3.ノーレスポンスの闇
また、いくら「忙しい」からと言って「おはようございます」の挨拶ひとつできない、しない、返さない人はまずいないはずなのに、「相手のメールに返信のひとつもしない(ノーレスポンスな)」人たちは少なくありません。
本人にはそのつもりはなくても、相手からは、「ノーレスポンス」は「迷惑メール同然の扱い」をされているように見えます。不信の「闇」を呼び、やがて人間関係は疎遠になるでしょう。「ありがとう」のひと言でも「クイックレスポンス」すべきです。
ある程度親しい間柄になると、事務的なやりとりだけでなく、お互いの「思い」や「感じ」をメールでやりとりする場面も出てくると思いますが、その場合でもお互いの「思い」や「感じ」のひとつひとつに「レスポンス」することが親交を保つ鍵です。
相手の「思い」や「感じ」への共感性をレスポンスするだけでなく、違和感を覚えるときでも何らかのレスポンスすべきです。そうでなければ相手の「思い」や「感じ」は行き所を失ない、相手に無用の妄想を生じたり、互いの関係を疎遠にしかねません。
メールでのやりとりには限度があり、節度も必要です。相手が発する言外のメッセージやシグナルに気付くべきです。ノーレスポンスの闇の中で、実は本人が悩み込み、困り果てているかも知れません。
4.「仕事の早さ」を身に付ける…
忙しさの壁をブレイクスルーし、ノーレスポンスの闇を解き明かすには、「仕事の速さ」が必要であり有効です。では、「仕事が早い」人は、なぜ仕事が早いのでしょうか?
① 実は「早いほうにタイミングを合わせている」だけ … 仕事の処理能力が何倍も速いわけでは必ずしもなく、とりかかるタイミングが早いから完了するタイミングが早いだけです。特に相手のある仕事ほど、早め早めに取り掛かる習慣が必要です。
② 要するに「何が大事かを選んでいる」だけ … 非本質的なこと、枝葉末節のこと、重要性も緊急性も低いことを諦め、捨象している。要するに何が本質的で重要な目的であり、価値であるかを常に考え、その為に何をすべきかを取捨選択しながら行動しています。
③ 実は「常に(既に)仕事をしている」だけ … 「~してから」「~してから」という積算で仕事をするのではなく、「~のためには」「~のためには」という逆算で仕事をしているから、実は、既に(いつも)仕事をしています。
④ 実は「設計に基づいて仕事をしている」だけ … 「いつまでにどうするか」が仕事の「計画」ですが、「そこをどうするか」が仕事の「設計」です。技術系の仕事にはあたり前であるように、事務系・人間系・社会系の仕事にも「設計」が必要です。
⑤ 実は「人と組織を通じて仕事をしている」だけ … 「仕事が遅い人」はたいてい「出来もしない仕事を一人で抱え込んで」います。仕事が上手く行くかどうかは「人と組織を通じて仕事をするかどうか」にかかっています。
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