20210911_対語による「人」の判別法

 

1.対語法(「人」を判別する軸として)

 

 これは心理学をふまえた実証的研究としてではなく、あくまで人事実務の経験に基づく発案ですが、採用面接におけるわずかなコミュニケーションを通じて、応募者の「人となり」を判別なら、その判別軸として、次のような「対語軸」が有効ではないでしょうか?

 

 ここで言う「人となり」とは、採用選考で判別すべき三つの適性(能力適性・資質適性・

指向適性)のうち、主として資質適性に関する適性判断の基準案です。応募者の性格やパーソナリティー上の特性を窺わせる要素です。

 

 あくまで、一般的に行われている採用面接でのわずかなやりとりを通じた「印象」の精度を少しでも上げること、複数の面接官の目線合わせを少しでも行うこと、将来の「問題職員」の問題に採用面接段階で「気付いて対応すること」を目的にしています。

 

  どちらが良いか、悪いかではなく、いずれか一方に極端な偏りがあるかどうかです。気になる項目にチェックしてください。

 

 ① 強と弱            

  □    言葉づかいや人あたりの強さと弱さ(やさしさ)   □

  □     自我・自己主張の強さと穏やかさ         □

  □        感情の激しさと穏やかさ          □

 ② 硬と軟

  □       ストレス耐性の強さと弱さ          □

  □         意思の強さと弱さ            □

  □       こだわりや粘りの強さと弱さ         □

 ③ 広と狭

  □        興味や関心の広さと狭さ          □

  □   いわゆる「ストライクゾーン」の広さと狭さ      □

  □           厳格と寛大             □

 ④ 動と静

  □           活動と思考             □

  □           攻撃と防御             □

  □           活発と抑制             □

 ⑤ 速と遅

  □          手早さと慎重さ            □

  □         即断即決と思慮深さ           □

  □           拙速と巧遅             □

 ⑥ 濃と淡

  □     大掴みか精緻か・大雑把か生真面目か       □

  □         広く浅く・狭く深く           □

  □          総合と専門              □

 ⑦ 直と曲

  □          単純と複雑              □

  □          原理と応用              □

  □          肯定と否定              □

 ⑧ 外と内

  □        外向き指向と内向き指向か         □

  □   陽と陰、能動と受容、行動と内省・開放と制御     □

  □        実証と思弁・帰納と演繹          □

 ⑨ 陽と陰

  □          陽向と日陰              □

  □          陽転と陰転              □

  □          活躍と支援              □

  

2.対語法のねらい

 

 対語(ついご)とは、善と悪、正と否など、誰にでもある正反対の資質特性をペアにした表現です。採用面接における資質適性の判定においては、資質をあらわすと思える対語を中軸に据えて、極端な偏りがないか、特に気になる項目がないかどうかを判定すべきです。

 

 決して応募者の全人格像を明らかにすることが採用面接の目的ではありません。あくまで「この人となら、ぜひ一緒に仕事をしてみたい」と、誰の目にも一般的に思わせる人かどうかを判定することが狙いです。

 

 また将来「職場(組織)の中の困った人たち」になるような資質上の極端な偏りや、アンバランスがないかどうかを採用選考の時点で判定しておくことが狙いです。(良い悪いということではなく、極端な偏りやアンバランスがないかどうかです。)

 

3.採用面接特に注視すべき性格的傾向について

 

 □ 社会的未熟性(幼少・学童期からの社会的人格の発達不全)

 □ 極端な自己愛的傾向、自己中心化傾向、自己肯定傾向

 □ 極端な他責化(他罰化)傾向または自責的(自罰化)傾向

 □ 極端な非協調性

 □ 極端な他者依存的傾向

 □ 極端な厳格化傾向または寛大化傾向

 □ 他者への興味関心、気づきや配慮の欠落

 □ 神経症的傾向

 □ 人格的な非統合性

 □ 非親和性

 □ 極端な演技的傾向

 □ 多動性障害傾向

 □ ・・・

 

 採用面接時に上記の傾向に気づくことは、「職場の中の困った(職場の中で困っている)人たち」の問題への「予防的対応」のひとつになるはずです。採用面接の時間や回数を惜しまず、心理テストを活用するなどして「気になることをそのままにしない」ことです。

 

<採用面接の時機を逸してしまったら…>

 

 採用後は雇用責任・育成責任があるので、マネジメントとしては「早く気付いて何とかする」以外にはなく、試用期間中から観察育成期間中、昇格昇進・管理職登用の機会に…OJTの機会に気付いて(気づかせて)何とかする以外にないのです。

 

 それにも気付かず、気付いても何もしないから問題が生じてから不用意な手を打とうとしたり、退職や定年を「解」にしてしまうのは、まさに「人事マネジメントの怠慢」としか言い様がありません。

   

<参考:性格的傾向の「ビッグ5」と経年変化>

 

 出典:「性格とは何か」(小塩 真司著・中公新書 p58)

 

   男女別の経年齢変化(10歳台・20歳台・30歳台・40歳台・50歳代の経年齢変化)

             男        女

 ① 外向性     ↘→→→→    ↘→→→→

 ② 神経症的傾向  ↘→→↘↘    ↗→↘↘↘

 ③ 開放性     ↘↗↗↗↗    ↘↗→↗↗

 ④ 協調性     ↘↗→↗↗    ↘↗↗↗↗

 ⑤ 勤勉性     ↘↗↗↗↗    ↘↗↗↗↗

 

 … 特に経験者採用において「年齢不相応な」未熟性や特異性はないでしょうか?

 また、本人は上記の性格的傾向の「ビッグ5」について、どのように自己認識(その成長

 過程を認識し、どのような言動や態度を意識的に選択)しているでしょうか?

  

<参考:YG性格検査における性格特性>

 

 出典:「性格とは何か」(小塩 真司著・中公新書 p136~138)

 

 <情緒不安定性因子>

 ① 抑うつ性(落ち込んだ気分や悲しい気分、罪悪感)⇔ 充実感や楽天的

 ② 回帰的傾向(感情の揺れ動きや気分の変わりやすさ、驚きやすさ)⇔ 冷静・理性的

 ③ 劣等感(人より劣っているという感覚、過小評価、優柔不断さ)⇔ 自身 

 ④ 神経質(心配症、不安定、いらいら、敏感)⇔ 情緒安定

 ⑤ 客観性の欠如(現実的でないことの空想、考え事)⇔ 現実的な思考

 ⑥ 協調性の欠如(不信や警戒心、閉鎖的な人間関係)⇔ 信用、開かれた人間関係

 <主導性や非内省性>

 ⑦ 愛想の悪さ・攻撃性(短気・怒りっぽい、意見を聴かない)⇔ 気長、聴き入れる

 ⑧ 一般的活動性(きびきび、動くのが好き)⇔ 動きが緩慢、効率が悪い

 ⑨ のんきさ(規則を気にせず、一緒に遊び、刺激を求める)⇔ 慎重、刺激を求めず

 ⑩ 思考的外交(細かいことを気にせず明るい見方、社交的)⇔ 几帳面で計画的 

 ⑪ 支配性(集団の先頭、リーダーシップ)⇔ 追従、受け入れ

 ⑫ 社会的外交(人付き合い、交流を楽しむ)⇔ 非社交的

 

  ここでも極端な偏りがあると見られる因子にチェックしてください。