1.MBOの意味
MBOという言葉は本来 Management by Objectives and Self control という言葉の略であって、日本では「目標管理」と訳されてしまい、何やら「働く人たちを『目標』で管理する」というニュアンスで通用してしまっているのが筆者には不満です。
我々が「目標」と訳してしまっているドラッカーの Objectivesという言葉は、働く人たち自身が「もっとこうしたい」「もっとこうありたい」と自らを動機付けるところの「動機付けの対象」(「ノルマ」とは正反対の意味)であると筆者は思います。
そして Management という言葉は、Self control という言葉が示すとおり、「自己管理」という意味であって、人が人に「目標(ノルマ)」を押し付けて支配したり管理したり搾取したりすることでは決してないはずです。
2.働く人たちにとっての「働く」ことの意味
ところで「働く」人たちにとって「働く」ということの意味は何なのか…。旧い民法には「傭用」の条文に「労務に服して賃金を得ること」と定義されており、まさに「労務に服すること」と「賃金を得ること」が「働く」ことの意味だとでも…?
たしかに身近に接する「労働者(働く人たち)」の多くは、「働く」ことそのものよりも、「働かない」こと(いかに少なく働き、いかに多く賃金を得るかということ。時短と賃上げ。)により多く動機付けられているようにも見えますが…。
しかし他方では、多くの人たちが、文字通り「社会的・人間的な目的の達成や価値の実現」のために働いている。例えば「自由・平和・幸福」のために。「自由・平和・幸福」という価値を実現することそのものを実現すべく「働いて」いる…。
3.「働く」ことの目標は揺るがない
それはひと言でいえば「人間らしさ」だと、筆者は思います。それぞれの時代の発展段階(人間と社会の成長段階)において、人間はより人間的であろうとするために働いてきたのだろうと思います。
たしかに「長時間・低賃金労働」から「短時間・高賃金労働」もそのひとつの段階であった(いまだにその段階である)としても、決してそれに留まらない、「自由・平和・幸福」や「真・善・美」…人間や社会にとっての価値の実現…。
例えば、ある「発達障がい者」の指導者は、それを「自律と支援」という言葉で指し示したそうです。また、それが「生涯不変の目標であるからこそ揺るがない目標」であると言ったそうです。