20180514_動機付けの根源は自己尊厳

 

1.人事労務管理の理論と言えば…

 

 人事労務管理に「理論」があるとしたらその代表格は「動機づけ理論」であり、またその代表格と言えば「マズローの欲求五段階説」ですが、どうも筆者にはそれにいまひとつ「しっくりこない」ものを感じています。

 

2.根底にあるのは強烈な自己生存・自己肯定・自己保全の欲求ではないか…

 

 何が人を最も根底的に動機付けているかと言えば、それは強烈な(=他を排するほどに強固な)自己生存や自己肯定や自己保全の欲求ではないか(この「段階」はマズロー説と同じ)と筆者は思います。

 

 つまり、人は自分の生存が脅かされたときに何をするか、他から自分が否定されたと感じたときにどうするか、なぜ「変わろうとしない」のか…。それらが人の動機付けの根底に強固に横たわっているように筆者には思えます。

 

3.そのひとつ上の段階は「自己尊厳」ではないか…

 

 筆者は職業がら、「働く人たちを最も根源的かつ強固に動機付けているものは何か?」と長い間自問自答して来たのですが、その回答のひとつが「働く人たちは自己尊厳の欲求にこそ最も根源的かつ強固に動機付けられている」ということです。

 

 例えば仕事を通じて得られる自己有能感、自己優越感、自己達成感、自己参画感、自己支配感…結局はそういうものが「人を仕事に動機付ける最も根源的かつ強固な要因」ではないかと思います。

 

 ただし、それはマズローの言う「親和の欲求」と併存しており、おそらく顕著な男女差(というより社会的な地位や役割に応じた有意差)や個人差(マネジメントスタイルで言えばP(達成)型とM(親和)型の有意差)があるように思います。

 

4.尊厳と親和を損なわないモチベーションマネジメント

 

 一般的に部下を動機付けるという場面でのモチベーションマネジメントのポイントのひとつは、部下の「自己生存・自己肯定・自己保全」を損なわないことは勿論、「自己尊厳」感に訴求して「達成」し続けることだと思います。

 

 その一方(それと並行して)組織や職場や仲間としての相互の「親和」感を損ねてはならず、それに訴求しながら相互の共感や理解や支持や協力を上手く引き出すマネジメントが一方では必要です。

 

5.尊厳と親和に終わらないモチベーションマネジメント

 

 しかし「一将功成りて万骨枯る」の結果にしてはならないし、そうかと言って組織や職場を「仲良しクラブ」や「ぬるま湯状態」にもできず、尊厳と親和を同時により上位段階に引き上げるようなマネジメントが必要です。

 

 その際のコンセプトは、「自己から相互へのシフト」だと筆者は考えています。そもそも社会的存在である人間にとって、個々の人間単独では動物レベルの生存競争でも想定しない限り生存も肯定も保全も尊厳も親和も成りつつはずもないのです。

 

 つまりマズローは各段階の欲求に「自己(Self)」という言葉を冠するけれど、そもそも社会的存在である人間にとって、「相互生存-相互肯定-相互保全-相互尊厳-相互親和」以外に生存も肯定も保全も尊厳も親和も成り立つはずがない…

 

6.人間は何を実現しようし、それにむけて成長するのか?

 

 人間は相互の生存と肯定と保全を根底に、また相互の尊厳と親和を根源に、人間的・社会的諸価値を実現しようとし、それに向けて自らとその社会を成長させ、進歩させてきたのだろうと思います。

 

 人間的・社会的諸価値とは、一般企業が実現しようとする経済的な価値だけではなく、例えば「真・善・美」であり、例えば「自由・平和・幸福」であり、それに向けて自らとその社会を成長させてきたに違いありません。

 

<マズローの欲求五段階説の読み替え:筆者>

 

 第四段階 … 人間相互の諸価値の実現

 第三段階 … 人間相互の成長

 第二段階 … 人間相互の尊厳と親和

 第一段階 … 人間相互の生存・肯定・保全

  

7.企業や組織におけるモチベーションマネジメント

 

  例えば職場における部下マネジメントの現実的な場面では、「自己尊厳感(=自己有能感、自己優越感、自己達成感、自己参画感、自己支配感…)」がモチベーションの根源として見えてくるだろうと思います。

 

 しかし一方で部下たちには強固な「親和」欲求があり、マネジメントは「尊厳と親和」の「矛盾」現象をより高次元に引き上げ、企業や組織が実現しようとする人間的・社会的価値やそれに向けた成長に動機付けることができるはずです。