「同一労働同一賃金」への実務的対応

 この稿では、いわゆる「同一労働同一賃金」関係の法令や判例をふまえて、主に医療機関での実務的な対応について(派遣労働者に関する事項を除く)、「学習ノート」の形式でポイントを絞って記述します。どうぞご参考に…。最新更新日:20190911

 

<参考法令等>

・労働契約法

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419AC0000000128

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/pamphlet.html

・パート・有期法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=405AC0000000076_20200401_430AC0000000071&openerCode=1

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000046152.html

 

 

<関係サイト_厚労省>

・「同一労働同一賃金特集ページ」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

・「同一労働同一賃金ガイドライン」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

 

ダウンロード
同一労働同一賃金ガイドライン_20181228.pdf
PDFファイル 452.8 KB

 

<参考文献>

・「同一労働同一賃金」のすべて(水町勇一郎著、有斐閣)

・「同一労働同一賃金Q&A」(高仲幸雄著、経団連出版)

 

<01>いわゆる「同一労働同一賃金」関連法改正の意義

 

 いわゆる「同一労働同一賃金」の意味は、少なくとも今回(2020年4月1日~施行)の関係法改正に関して言えば、「同一事業主のもとでの、正規職員と非正規職員との間の不合理な処遇格差の是正」であることは、既に共通認識であろうかと思います。

 

 つまり、フルタイムかつ無期雇用の職員を「正規職員」、それ以外(短時間または有期雇用)の職員を「非正規職員」として、同一事業主のもとでの両者間の「不合理な処遇格差」を是正しようとするのが今回の法改正の意義であることは既にご理解のとおりです。

 

 正規職員  … フルタイムかつ無期雇用

  ↑↓  (両者間の不合理な処遇格差の是正)

 非正規職員 … 短時間または有期雇用

 

<02>必ず押さえておくべき改正法の条文

 

 ところで、「同一労働同一賃金」に関係する法令の中で「最低限これだけは」必ず押さえておくべき条文は、労働契約法第20条と、パート・有期法第8条・第9条です。

 

労働契約法

第20条

 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

パート・有期法_短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第8条(均衡待遇)

 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
第9条(均等待遇)
 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。
つまり…
<均衡待遇:パート・有期法第8条>
 職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)
 当該職務の内容及び配置の変更の範囲
 その他の事情のうち
 当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、
 不合理と認められる相違を設けてはならない。
<均等待遇:パート・有期法第9条>
 職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)が同一で、
 その職務の内容及び配置の変更の範囲が同一であることが見込まれるものについては、
 差別的取扱いをしてはならない。
 上記改正法の施行日は2020年4月1日(「中小企業」に相当する病院等は2021年4月1日)です。それまでの間は、現行の労働契約法およびパート法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が適用されます。
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中小企業の範囲.pdf
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<03>職員の雇用区分の一覧化

 

… 具体的な対応を考える前に「先ずこれだけは」整理しておくべきことは、各医療機関の職員の雇用区分を一覧化することです。

 

 つまり、職員の雇用区分は「フルタイム勤務かパートタイムか」および「無期雇用か有期雇用か」によって大きく四区分されます。

 

 実際にはさらに「常勤(事業所の所定就業日の全部に就業)」か「非常勤(同左・一部に就業)」によって区分されるでしょうし、「有期雇用」も「期間雇用(通常1年単位)」か「臨時雇用(日々~1年未満の月単位)」かで区分すべきでしょう。

 

(職員の雇用区分の例)

フルタイム

パートタイム

無 期

有 期

無 期

有 期

期 間

臨 時

期 間

臨 時

常 勤

非常勤

常 勤

非常勤

常 勤

非常勤

常 勤

非常勤

 

<04>均衡又は均等にすべき「処遇」の一覧化

 

 前掲「同一労働同一賃金ガイドライン」によれば、「処遇」の内容は下記のとおりです。先ずはこれに基づいて、正規雇用-非正規雇用の間に不合理な格差について検討を要する「処遇」項目の一覧化が必要です。

 

 1.基本給

 (1)基本給の決定要素(能力・経験等、何に応じて基本給を支給するか?)

 (2)昇給(勤続による能力の向上等、何に応じて行うか?)

 2.賞与

  業績等への労働者の貢献等、何に応じて支給するか?

 3.手当

 (1)役職の内容に対して支給される役職手当

 (2)業務の危険度又は作業環境に応じて支給される特殊作業手当

 (3)交替制勤務等の勤務形態に応じて支給される特殊勤務手当

  (筆者注:宿日直手当や自宅待機からの呼出手当についても検討が必要です。)

 (4)精皆勤手当

 (5)時間外労働に対して支給される手当

 (6)深夜労働又は休日労働に対して支給される手当

  (筆者注:(5)(6)については法定内のものについては算定基礎および割増率、

   法定外のものについては支給額や算定方法について検討が必要です。年末年始出

   勤手当についても検討が必要です。)

 (7)通勤手当及び出張旅費

 (8)労働時間の途中に食事のための休憩時間がある労働者に対する食費の負担補助

    として支給される食事手当

 (9)単身赴任手当

 (10)特定の地域で働く労働者に対する補償として支給される地域手当

 4.福利厚生

 (1)福利厚生施設(給食施設、休憩室及び更衣室をいう)

 (2)転勤者用社宅

 (3)慶弔休暇並びに健康診断に伴う勤務免除及び当該健康診断を勤務時間中

    に受診する場合の当該受診時間に係る給与の保障

 (4)病気休職

 (5)法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く。)であって、

    勤続期間に応じて取得を認めているもの

  (筆者注:年次有給休暇の付与日数、病気等による不就業に対する法定外の補償

   なども検討が必要です。)

 5. その他

 (1)教育訓練であって、現在の職務の遂行に必要な技能又は知識を習得するために

    実施するもの

 (2)安全管理に関する措置及び給付

  

… 以上が「同一労働同一賃金ガイドライン」の「第3 短時間・有期雇用労働者」について

  記載された事項ですが、実際には(実際に訴訟になった処遇内容を含めると)さらに、

  以下の処遇についても検討が必要です。

 

 6.「ガイドライン」に記載されたもの以外に検討を要する「処遇」の内容

 (1)定年の定め

 (2)退職金の定め

 (3)住宅手当

 (4)家族手当(扶養手当)

 (5)永年勤続表彰

 

<05>「雇用区分別処遇一覧」の作成