同一労働・同一賃金の件、いかがですか?
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new 20200125
また、実務的には、短時間・有期契約職員の就業規則の制定又は改定を通じて、正規職員との間の待遇差を確認し、それが不合理なものとならないように是正することが、最も効果的かつ効率的です。
今なら当研究会オリジナルの「短時間・有期契約職員就業規則」のひな型を無料進呈しますので、お気軽にご用命ください。
hrms-jp医療人事労務マネジメント研究会
社会保険労務士 河北 隆 事務所
更新日:20191001
最近の関係判例一覧と概要を掲載します。
… 以下、この稿では、いわゆる「同一労働同一賃金」関係の法令や判例をふまえて、主に医療機関での実務的な対応について(派遣労働者に関する事項を除く)、「学習ノート」の形式でポイントを絞って記述します。どうぞご参考に…。
<参考法令等>
・労働契約法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419AC0000000128
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/pamphlet.html
・パート・有期法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000046152.html
<関係サイト_厚労省>
・「同一労働同一賃金特集ページ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
・「同一労働同一賃金ガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html
<本サイト内の関連ページ>
<参考文献>
・「同一労働同一賃金」のすべて(水町勇一郎著、有斐閣)
・「同一労働同一賃金Q&A」(高仲幸雄著、経団連出版)
<01>いわゆる「同一労働同一賃金」関連法改正の意義
いわゆる「同一労働同一賃金」の意味は、少なくとも今回(2020年4月1日~施行)の関係法改正に関して言えば、「同一事業主のもとでの、正規職員と非正規職員との間の不合理な処遇格差の是正」であることは、既に共通認識であろうかと思います。
つまり、フルタイムかつ無期雇用の職員を「正規職員」、それ以外(短時間または有期雇用)の職員を「非正規職員」として、同一事業主のもとでの両者間の「不合理な処遇格差」を是正しようとするのが今回の法改正の意義であることは既にご理解のとおりです。
正規職員 … フルタイムかつ無期雇用
↑↓ (両者間の不合理な処遇格差の是正)
非正規職員 … 短時間または有期雇用
<02>必ず押さえておくべき改正法の条文
ところで、「同一労働同一賃金」に関係する法令の中で「最低限これだけは」必ず押さえておくべき条文は、労働契約法第20条と、パート・有期法第8条・第9条です。
労働契約法
第20条
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
パート・有期法_短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
第8条(均衡待遇)
<03>先ず、職員の雇用区分を一覧化することが必要。
… 具体的な対応を考える前に、先ずは各医療機関の職員の雇用区分の一覧化が必要です。つまり、職員の雇用区分は「フルタイム勤務かパートタイムか」および「無期雇用か有期雇用か」によって大きく四区分されます。
実際にはさらに「常勤(所定就業日の全部に就業する)」か「非常勤(所定就業日の一部に就業する)」によって区分されるでしょうし、さらに、「定年後の再雇用職員」や「無期転換後の有期雇用職員」に異なる処遇要件の定めをする場合には、区分が必要です。
フルタイム | パートタイム(短時間勤務) | 無期転換 | 定年後再雇用 | ||||||
無 期 | 有 期 | 無 期 | 有 期 | ||||||
常勤 | 非常勤 | 常勤 | 非常勤 | 常勤 | 非常勤 | 常勤 | 非常勤 |
<04>次に「雇用区分」ごとの「処遇要件」を一覧化する。
ところで、前掲「同一労働同一賃金ガイドライン」によれば、「処遇要件」の内容は下記のとおりです。前掲の「雇用区分」ごとに、これらの「処遇要件」の違いが分かるように一覧化することが必要です。
(「ガイドライン」に記載されている「処遇要件」の項目)
① 基本給
1_基本給の決定要素(能力・経験等、何に応じて基本給を支給するか?)
2_昇給(勤続による能力の向上等、何に応じて行うか?)
② 賞与
業績等への労働者の貢献等、何に応じて支給するか?
③ 手当
1_役職の内容に対して支給される役職手当
2_業務の危険度又は作業環境に応じて支給される特殊作業手当
3_交替制勤務等の勤務形態に応じて支給される特殊勤務手当
(筆者注:宿日直手当や自宅待機からの呼出手当についても検討が必要です。)
4_精皆勤手当
5_時間外労働に対して支給される手当
6_深夜労働又は休日労働に対して支給される手当
(筆者注:(5)(6)については法定内のものについては算定基礎および割増率、
法定外のものについては支給額や算定方法について検討が必要です。祝日や年末
年始の出勤手当についても検討が必要です。)
7_通勤手当及び出張旅費
8_労働時間の途中に食事のための休憩時間がある労働者に対する食費の負担補助
として支給される食事手当
9_単身赴任手当
10_特定の地域で働く労働者に対する補償として支給される地域手当
④ 福利厚生
1_福利厚生施設(給食施設、休憩室及び更衣室をいう)
2_転勤者用社宅
3_慶弔休暇並びに健康診断に伴う勤務免除及び当該健康診断を勤務時間中
に受診する場合の当該受診時間に係る給与の保障
4_病気休職
(筆者注:病気欠勤に対する給与補償、休職発令要件、休職期間などについて検
討が必要です。)
5_法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く。)であって、
勤続期間に応じて取得を認めているもの
(筆者注:年次有給休暇の付与日数、病気等による不就業に対する法定外の補償
なども検討が必要です。)
⑤ その他
1_教育訓練であって、現在の職務の遂行に必要な技能又は知識を習得するために
実施するもの
2_安全管理に関する措置及び給付
<05>「ガイドライン」の前提として比較対照すべき処遇要件がある。
… 以上が「同一労働同一賃金ガイドライン」の「第3 短時間・有期雇用労働者」について
記載された事項ですが、実際には(実際に訴訟になった処遇内容を含めると)さらに、
以下の処遇要件についても比較対照が必要です。(筆者追記事項)
雇用区分の名称(雇用区分を特定するための任意項目です。)
人数(各区分の対象者を特定するための任意項目です。)
① 就業規則等の適用(処遇要件を明文化したものの有無。)
② 勤務時間(および休憩時間)
③ 雇用期間(および実際の勤続期間)
④ 所定就業日(および所定休日)
⑤ 定年制
⑥ 定年後再雇用
⑦ 職種・職務(および職位・等級)
<06>「ガイドライン」記載事項以外に比較対照すべき処遇要件がある。
法令の趣旨や判例の動向から見て「ガイドライン」記載事項以外に比較対照すべき処遇要件があります。
① 賃金体系・賃金水準
② 退職金
③ 住宅手当
④ 家族手当(扶養手当)
⑤ その他インセンティブ手当
⑥ 年次有給休暇付与要件
⑦ 永年勤続褒賞
⑧ その他福利厚生施策
(注)上記①「賃金の水準」のうち「基本給の水準」については、例えば後掲のような「給料表」および給料表上の分布状況を想定しています。
<07>現実的・実務的な「雇用区分別処遇要件一覧表」
… したがって、上記<03>「雇用区分」の横軸に、上記<04><05><06>の「処遇要件」(下記)の縦軸を組み合わせれば、「正規職員」とそれ以外の「非正規職員」の処遇格差を確認・検討するための一覧表が出来上がります。
<08>比較のもとになる「正規職員」の処遇要件(および処遇状況)の明文化
… さていよいよ、上記の一覧表に基づいて「正規職員」とそれ以外の「非正規職員」との間の処遇要件の格差(およびその不合理性の有無)の検討に入りますが、その前にそもそも比較のもとになる「正規職員」の処遇要件(および処遇状況)の明文化が必要です。
… 特に下記についての明文化が必要です。(順不同)
□ 就業規則や給与規程(または雇用契約)は最新状態になっていますか?
□ 職位や等級は明文化されていますか?
□ 職種や職務は明文化されていますか?
□ 給料表は明文化されていますか?
□ 目標管理や人事評価に基づいて昇給を行う仕組みになていますか?
□ 業績評価に基づいて賞与を支給する仕組みになっていますか?
□ 非正規職員から正規職員への転換ルールは明文化されていますか?
これを機会に、先ずは比較対照のもとになる正規職員の処遇要件を合理化(少なくとも明文化)しておく必要があるはずです。今までのように「正規職員を漫然と優遇」していたのではますます「非正規職員との不合理な処遇格差」を招いてしまいます。
下記様式例(拙著付録様式)を参考に、この機会に「比較対照のもとになる正規職員の処遇要件を合理化し・明文化する」ことを試みて下さい。
<09>比較の対象となる「非正規職員」の処遇要件(および処遇状況)の明文化
次に「正規職員」以外の「非正規職員」の処遇要件と処遇状況を「雇用区分」別に明文化しなければなりませんが、「雇用区分」別に明文化されていなければ、「個人」別に一覧化しておく必要があります。
<10>「基本給」に関する「不合理な格差」の検証と是正
① そもそも「正規職員」の「基本給」を何に基づいて定める(ている)か?
前掲資料「病院の人事評価」および「病院の処遇と報酬」記載のとおり、本稿では、正規職員の基本給は、職種ごと・等級ごとに、下限額と上限額を定めています。
… ここでいう「等級」とは、「予定される職務のレベル(職務の難易度)や必要とされる能力のレベル(能力の発揮度)」を想定しています。
1等級 … 個別具体的な指示に基づいて比較的定型的な業務を遂行するレベル
2等級 … 包括的な指示に基づいて判断力を発揮しながら業務を遂行するレベル
3等級 … 方針的な指示に基づいて指導力を発揮しながら業務を遂行するレベル
4等級 … 小規模の組織マネジメント機能または相応の専門性の発揮
5等級 … 中規模の組織マネジメント機能または相応の専門性の発揮
6等級 … 大規模の組織マネジメント機能または相応の専門性の発揮
同一等級内での昇給は、人事評価に応じた昇給を、各等級の下限額と上限額の間で行なうことを想定しています。
評価S … 当年度の標準等級号数+2号給
評価A … 当年度の標準等級号数+1号給
評価B … 当年度の標準等級号数+0号給
評価C … 当年度の標準等級号数-1号給
評価D … 当年度の標準等級号数-2号給
職位昇進や等級昇格は、現時点の職位・等級での人事評価+部門長の推薦に応じて行うことを想定しています。
直近2年度間の人事評価がA-A以上 … 昇任・昇格候補
直近2年度間の人事評価が上記未満 … 滞留
② 同一職種・職務の「非正規職員」をどのように扱うか?
例えば病院で、正規職員と同様の医事請求や給与計算や看護補助を行う非正規職員の基本給に関する処遇要件と処遇状況を、正規職員との間に「不合理な格差」がない状態にするためには何をどうすれば良いでしょうか?
勤続期間が比較的短い(例えば5年未満)非正規職員については、正規職員と同じような「職種・職務・職位・等級」体系への位置付けや、そのうえでの「基本給」の設定までは必要がないと思いますが、「基本給」の水準格差については検証と是正が必要でしょう。
冒頭に挙げた例では、正規職員が月給制であり、パート職員が時給制であるなら、パート職員の時給を、正規職員の時給に換算して、両者間に「不合理な格差」がないかどうかを先ず検証する必要があります。つまり…
正規職員の月所定就業時間を160時間とするなら、
例)時給1,000円のパート職員は、月給160,000円の正規職員に相当する。
例)時給1,500円のパート職員は、月給240,000円の正規職員に相当する。
上記のような換算と比較をして、両者間に「職務内容や職務内容・配置の変更の範囲」に照らして「不合理な格差が無い」と説明できるならそれで良いのですが、そうでないとしたら、是正が必要です。
その是正は、正規職員に準じて(当該パート職員を、正規職員の1等級~2等級に相当する職務を遂行する職員として位置付けて)毎年度の人事評価と昇給を通じて行うことが現実的でしょう。
<現実的な是正例>
… 正規職員(ここでは1等級~2等級)に準じて、非正規職員(ここではパートタイム職員)に対して、毎年度「人事評価」を行うこととし、「人事評価」に応じて毎年度「昇給」を行うこととする。
S … 当年度の標準昇給号数+2号に相当する昇給を行う。
A … 当年度の標準昇給号数+1号に相当する昇給を行う。
B … 当年度の標準昇給号数+0号に相当する昇給を行う。
C … 当年度の標準昇給号数-1号に相当する昇給を行う。
D … 当年度の標準昇給号数-2号に相当する昇給を行う。
… 正規職員の月所定就業時間を160時間とするなら、
例)月給160,000円の正規職員の標準昇給額を1号=1,600円とすると、
時給1,000円のパート職員がB評価の場合の昇給額は10円となる。
例)月給240,000円の正規職員の標準昇給額を1号=2,400円とすると、
時給1,500円のパート職員がB評価の場合の昇給額は15円となる。
フルタイムの、しかも期間雇用とは言え勤続期間が5年以上ともなるような「非正規職員」の場合には、上記のような調整ではなく、正規職員と同様の「職種・職務・職位・等級」体系に位置づけたうえで「基本給」の水準是正を行うべきでしょう。
<11>「賞与」に関する「不合理な格差」の検証と是正
やはり上記のような例(正規職員と同様の医事請求や給与計算や看護補助を行うパート職員の例)で、賞与の支給に関して「不合理な格差」は無いでしょうか?(「正規職員には支給し、パート職員には支給しない」ことも含めて。)
本稿では、正規職員には以下のような算定式で年間の賞与額を算定することを想定するものとします。(夏冬均等支給)
一人当たりの当年度の賞与額
=直近年度の事業業績に応じて、職種・等級ごとに定める一人当たりの標準賞与額
×個人ごとの賞与評価(事業業績への貢献度)
つまり、例えば、直近年度の事業業績に応じた、ある母集団(正規職員の場合は職種・等級別に母集団を構成するとして)の年間の一人当たりの標準賞与額を100万円とし、「賞与評価」を「人事評価」と同様に行うものとするなら…
正規職員には、下記のような金額の賞与を支給することになります。
S … 当年度の標準賞与額×1.2の額=120万円を支給する。
A … 当年度の標準賞与額×1.1の額=110万円を支給する。
B … 当年度の標準賞与額×1.0の額=100万円を支給する。
C … 当年度の標準賞与額×0.9の額= 90万円を支給する。
D … 当年度の標準賞与額×0.8の額= 80万円を支給する。
ところで「ガイドライン」は「会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の貢献である短時間・有期雇用労働者には、貢献度に応じた部分につき、通常の労働者と同一の賞与を支給しなければならない」としています。
そこで、例のように、1~2等級の正規職員と同様に医事請求や給与計算や看護補助を行うパート職員にも「不合理な格差」を生じない賞与を支給する(またはしない)としたら、 母集団をどう定め、標準賞与額をどう定め、貢献度評価をどう行うかが問題です。
ただし、現実的に、例えば医事請求や給与計算や看護補助を行う1~2級レベルの正規職員に、BSCとMBOによる厳格な目標管理を行い、同様の職務を行う非正規職員との賞与の(支給の有無及び支給額の)格差を「不合理でない」と説明するのは無理があります。
むしろ医事請求等を行う1~2級の正規職員を「業績目標管理」の対象から外し、「事業業績に応じた一定額の賞与」を支給することとし、同様の職務を行う非正規職員にもこれに準じた「一定額の賞与」を支給することのほうが現実的ではないでしょうか?
<12>「退職金」等に関する「不合理な格差」の検証と是正
退職金・住宅手当・家族手当等について「ガイドライン」の「第2 基本的な考え方」は、「不合理と認められる待遇の相違や、具体例に該当しない場合についても、不合理と認められる待遇の相違の解消等が求められる。」としています。
そもそも「退職金」の趣旨・目的を「長年の功労に対する報償」と再定義するなら、正規・非正規の別にかかわらず、「勤続5年未満」の職員に(少なくとも多額の退職金を)支給する意味は見出し難いと、筆者は考えます。
それだけの原資があるなら、むしろ勤続5年未満の正規・非正規職員の基本給の原資に組み入れて、採用市場での競争力をたかめるほうが得策だと筆者は考えますが、いかがでしょうか?
敢えて勤続5年未満の職員に支給するなら、正規・非正規にかかわらず、文字通り「退職慰労金」として、例えば「給与月額の1か月分を超えない一時金を支給する」こととしてはいかがでしょうか?
勤続が5年以上となる非正規職員の場合は(本来、非正規職員の勤続が5年以上にならないように管理すべきだというのが筆者の持論ですが)、正規職員の退職金制度を適用すべきでしょう。
住宅手当や家族手当という「生活給」についても、それを非正規職員に「不合理な格差」なく支給するよりも、それだけの原資があるなら正規・非正規職員間の基本給の不合理な格差の是正のための原資に組み入れるほうが良いと、筆者は考えます。
<13>休日・休暇・休職に関する「不合理な格差」の検証と是正
① 所定休日について
所定休日について「土日+祝日(祝日法および関係法令に定める祝日および休日)+年末年始」とする例が一般的でしょうし、パートタイム・フルタイム、無期雇用・期間雇用の別にかかわらず「所定休日」については「不合理な格差」は考えにくいでしょう。
ただし、「24時間365日応需」の医療現場の場合は、そもそも「土日+祝日+年末年始」を「所定休日」として定めること自体に無理があり、正規・非正規に関わらず、「変形労働制」によって年間を通じて所定休日を計画的に設定するほうが良いでしょう。
② 年次有給休暇について
年次有給休暇の付与日数は、非正規職員の場合は「法定通り」とする例が多く、正規職員の場合は、例えば「採用初年度から採用月に応じて最大12日間を付与する」など「法定を上回る」例が多いと思われます。
「法定の年次有給休暇日数を上回る有給休暇」は、ガイドライン(福利厚生)にいう「法定外の有給の休暇」にあたり、「勤続期間に応じて取得を認めているものについて、通常の労働者と同一の勤続期間である」非正規職員に同一の付与をしなければなりません。
③ 特別休暇について
正規職員に「法定の年次有給休暇日数を上回る有給休暇」を付与しているのであれば、非正規職員に対しても、正規職員と同様に採用初年度から、所定就業時間や所定就業日に応じた「法定の年次有給休暇日数を上回る有給休暇」を付与すべきでしょう。
問題はまた、「有給の慶弔休暇」を、正規職員には採用初年度から、勤続年数にかかわらず付与しながら、非正規職員には勤続年数にかかわらずこれを付与していないような例であり、これについても「所定就業時間や所定就業日に応じた付与」が必要でしょう。
思うに、労務管理上、年次有給休暇は、「付与日数」の多寡よりも、「取得日数」の多寡が「問題」なのであって、いくら「有給休暇」を増やしても「取得日数(または取得率)」が増えなければ意味がありません。
病院で正規職員に付与される「夏期休暇」も、「夏期には取り難い」繁忙状況にあるのが実情でしょう。そうであれば年間を通じて取得できる「リフレッシュ休暇」にして、「年間を通じた計画的な取得による取得日数(取得率)の向上」を図るべきです。
今まであれこれと正規職員の「有給休暇」を増やすことに注力されてきたことと思いますが、非正規職員への(均等及び均衡な)付与の機会に、有給休暇全体を「勤続年数・就業時間・就業日数に応じた合理的な付与」に見直しても良いのではないでしょうか?
④ 病気欠勤時の給与補償について
私傷病欠勤の場合、そもそも健康保険の傷病手当金の範囲を超える給与補償を、正規職員と非正規職員の間の「不合理な格差」を生じてまで、使用者がどこまで行う必要があったのでしょうか…?
公務員の場合は典型的ですが、今まで正規職員に行われてきた「(法定の補償を超える)欠勤補償」は、「ノーワーク・ノーペイの原則」から見て、「手厚すぎる」感を否めません。
今まであれこれと正規職員の「欠勤補償」を増やすことに注力されてきたことと思いますが、非正規職員への(均等及び均衡な)付与の機会に、「欠勤補償」全体を「勤続年数・就業時間・就業日数に応じた合理的な補償」に見直しても良いのではないでしょうか?
⑤ 私傷病休職について
端的に言って「私傷病休職制度」は、「私傷病による解雇を一定期間猶予して雇用を補償する制度」なのですから、やはり、この機会に正規・非正規にかかわらず、「勤続年数・就業時間・就業日数に応じた合理的な補償制度」に見直すべきでしょう。
<14>その他「不合理な格差」が懸念される処遇要件について
① その他、今まで正規職員の処遇向上のために積み上げてきた法定外の補償が、非正規職員に対する法定外の補償との間に「不合理な格差」を生じている場合に問題があるはずです。(例:時間外・休日・深夜勤務への法定外の手当、特殊勤務および特殊作業手当)
② また、福利厚生条件についても、今まで正規職員の処遇向上のために積み上げてきたさまざまの優遇策が、非正規職員に対する福利厚生条件との間に「不合理な格差」を生じている場合に問題があるはずです。(例:住宅費補助)
③ とくに、「正規職員と同等の職務の困難さ責任の重さや能力の発揮度」の、「勤続期間も長く、経験も豊富」な職員が、「非正規職員(短時間勤務または有期雇用の職員)」であるがゆえに、「不合理な格差」に陥っている場合が問題です。(例:給与水準の格差)
④ つまり「漫然と正規職員の処遇を厚くしてきた」ことが「非正規職員の処遇との間に不合理な格差を生じてしまった」ことに特に問題があるのですから、この機会に、「正規職員-非正規職員を通じた合理的な処遇のあり方」を労使間で協議すべきでしょう。