7_1.モラールとモチベーションのマネジメント

 (1)モラールとモチベーションの高低

 

 組織協働的に働く人々のマネジメント=労務管理の中で、最も重要なテーマのひとつは、モラール(Morale)やモチベーション(Motivation)のマネジメント、すなわち、「働く意欲(やる気)」をどのようにして高く維持するかという問題です。

 

 モラールやモチベーションの高い状態と言うのは、ひと言で言えば「組織(企業)の構成員が仕事そのものに動機付けられている」状態です。構成員がより高い目的や豊かな価値を、互いの成長と協働を通じて達成し、実現しようとしている状態です。

 

 以下には、仕事や組織、職場の人間関係や心身の状況等について、モラールやモチベーションが高い状態と、モラールやモチベーションが低い状態を比較対照しながら記述してみましたので、これに基づいて部下や職場の状況の振り返ってみて下さい。

 

① 仕事そのものへの動機付けについて

  高)仕事をすることに動機付けられている。多少の負担や責任の発生を厭わず。

  低)仕事をしないことに動機付けられている。従属的で負担や責任を回避。

② 仕事の量や質

  高)仕事の量や質が自分の能力とマッチしている。

  低)仕事の量や質が自分の能力とマッチしていない。

③ 仕事への興味や価値観

  高)仕事に興味があり、意義や価値を感じる。

  低)仕事に興味が無く、意義や価値を感じない。

④ 仕事の成果ややりがい

  高)やりがいや達成感を感じ、フェアに評価されていると思う。

  低)やりがいも達成感も無く、満足な評価も得らえない。

⑤ 仕事への主体性

  高)仕事上の裁量権があり、時間配分も自己管理できる。

  低)仕事上の裁量の余地が無く、時間配分も自己管理できない。

⑥ 仕事上の適性や能力

  高)仕事上の適性も能力もあると感じ、能力向上に努めたいと思う。

  低)仕事上の適性も能力も感じないし、能力を高めたいとも思わない。

⑦ 組織や企業へのコミットメント

  高)組織(企業)の事業の目的達成や価値実現に主体的にコミットする。

  低)組織(企業)の事業の目的達成や価値実現に無関心。

⑧ 職場の人間関係

  高)上司・同僚・部下や関係先と良好な人間関係・信頼関係を築ける。

  低)上司・同僚・部下や関係先と良好な人間関係・信頼関係を築けない。

⑨ 職場環境や処遇条件

  高)職場環境や処遇条件に不満は無く、自分の努力や工夫で何とかなる。

  低)職場環境や処遇条件に不満があり、自分で何とかしようとも思わない。

⑩ その他、心身の状態など

  高)心身の状態は良好で、将来の不安も無い。

  低)何となく不調で意欲も起きず、将来への明るい展望も持てない。

 

上記を「サーベイシート」形式にしたのものをご参考に供します。

ダウンロード
モラールサーベイシート.xlsx
Microsoft Excel 12.9 KB

(2)モラールとモチベーションの向上のために

 

① 上司自身のモラールとモチベーションが高くなければ話にならない

 

 上司たる管理職自身が、組織や企業の事業や、その目的や価値に対して、また、人間関係や職場環境等に関して、上記①から⑩の各項目に「高」が付く状態でない限り、部下にそれを求めるのは無理です。

 

② モラールとモチべ―ションを高めるコミュニケーション

 

 上司自身がモラールやモチベーションを高く保ち、コミュニケーション促進要因を多く(コミュニケーション阻害要因を少なく)すればするほど(参考7_5 Communication部下のモラールやモチベ―ションは向上するはずです。

 

③ モラールの増進要因を多く、減衰要因を少なく

 

 ①②と重複しますが、組織や企業の中にモラールを増進させる要因が多ければ多いほどモラールは高まり、逆にモラールを減衰させる要因が多ければ多いほどモラールが低下するのは当然です。(増進要因と減衰要因を以下に例示列挙します。)

 

_1 トップやリーダーの言動や態度

 

  トップやリーダーの言動や態度(その前提となる考え方や価値観、またそれらに基づく習慣)が何ごとに対しても(例えばメンバーの仕事や努力や意思に対して)概してポジティブ(肯定的)かネガティブ(否定的)かによって組織や企業のモラールが左右されます。

 

 _2 メンバーと仕事との関係

 

 メンバーの仕事そのものへの動機付け、仕事の量や質が適切さ、興味や価値、やりがいや達成感や高評価感、仕事上の裁量権、仕事への適性感や有能感、向上意識、組織や企業の目的や価値へのコミットメントがモラールの増進要素です。

 

_3 職場の人間関係など

 

 職場の双方向のコミュニケーションとそれに基づく人間関係が良好で、相互に信頼関係が築けていること、職場環境や処遇条件に不満が少なく自分たちで何とかしようとしていること、心身の状態が良好で将来への期待感があることなどがモラールを増進させます。 

 

<参考>「仕事に対する意欲と今の職場で実現できている制度・施策との関係」

 

「従業員の意識と人材マネジメントの課題に関する調査」(2008年 労働政策研究・研修機構)より抜粋

http://www.jil.go.jp/institute/research/2008/051.html

 

男女ともに仕事の意欲の向上に寄与していると感じる項目(上位10項目)

 ① 仕事上、上司からフォローが得られること (男性<女性)

 ② 賃金を引き上げること (男性>女性)

 ③ 仕事の成果をより重視して処遇すること (男性>女性)

 ④ 作業環境を改善すること (男性<女性)

 ⑤ 仕事上の裁量をより高めること (男性<女性)

 ⑥ 計画的な能力開発を実施すること (男性<女性)

 ⑦ 個人の希望を重視して配置すること (男性>女性)

 ⑧ 自己申告や社内FA制度を活用すること (男性<女性)

 ⑨ 福利厚生を充実すること (男性>女性)

 ⑩ 仕事と家庭生活の調和を図る施策を充実すること (男性<女性)

 

男性が仕事の意欲の向上に寄与していると感じる項目(上位5項目)

 ① 賃金を引き上げること

 ② 仕事上、上司からフォローが得られること

 ③ 仕事の成果をより重視して処遇すること

 ④ 計画的な能力開発を実施すること

 ⑤ 個人の希望を重視して配置すること/仕事上の裁量をより高めること

 

女性が仕事の意欲の向上に寄与していると感じる項目(上位5項目)

 ① 仕事上、上司からフォローが得られること

 ② 仕事上の裁量をより高めること

 ③ 仕事と家庭生活の調和を図る施策を充実すること

 ④ 作業環境を改善すること

 ⑤ 自己申告や社内FA制度を活用すること