7_3 Motivation(動機付け)

 

 組織や企業が、その事業を通じて達成目的と実現価値を決定Decisionし、トップや管理職を通じてそれをメンバーに指し示しOrientationたら、次にはメンバーをその目的の達成や価値の実現に向けて組織的に動機付けMotivationしなければなりません。

 

(1)組織で働く人たちの動機付け要因はある程度ばらつきがあってよい。

  

 組織や企業のメンバーに対して、組織や企業が、その事業を通じて達成しようとする目的や実現しようとする価値への、ほぼ全面的なコミットメントを期待してよいと考えるのは、むしろ当然であるような気がしますが、現実には必ずしもそうではありません。

 

 例えば介護事業の労働者が今の仕事を選んだ理由は、 「働きがいのある仕事だから」52.2%、「資格・技能が活かせる」35.8%、「人や社会の役に立ちたい」31.8%でした(複数選択)。(平成27年度「介護労働者の就業実態と就業意識調査」介護労働安定センター)

 

 個々のメンバーは、ベクトル(動機付け)の大きさも方向も、組織や企業の目的や価値へのコミットメントの程度も異なりますが、それらをどれだけ組織や企業全体の最適和につなげていくか、が即ち組織マネジメントのモチベーションの機能です。

 

 DecisionやOrientationと違い、Motivationはトップダウンには馴染みません。メンバー自身が、それぞれの現実の仕事を通じて、その目的や価値を実感できる(例えば介護労働者が利用者の感謝や上司の評価を通じて)のでなければ根強いMotivationは得られません。

 

 メンバーから強いMotivationを引き出すためには、組織や企業が、何を達成すべき目的とするか、何を実現すべき価値とするかを適切に選択し、トップや管理者が何を目標として掲げ、何を正義とし、何を当為として敢然と実践するかが重要です。

 

(2)但し、組織の目的や価値に反したり、他のメンバーの動機付けを阻害することはNG。

 

 個々のメンバーの動機付けは、その地位や役割など、またそれぞれのワークライフバランスに応じて様々であって良く、それをひとつに外圧的に強制するべきでなく、組織の目的や価値に向けて広く大きく内発的に動機付けることができれば良いのです。

 

 但し、組織として最も注意しなければならない点は、個々のメンバーが、組織の目的や価値、延いては組織の存立そのものに反することに向けて動機付けられていないかどうかという点であり、その点だけは許容範囲ではないはずです。

 

 また、企業で働く人たちにとっては、人間関係の良し悪しがモチベーションの促進要因にも阻害要因にもなっている場合が多いものです。特に人から「信頼」や「信用」や「理解」や「支持」や「協力」や「評価」が得られなければモチベーションは低下します。

 

 良好な人間関係は「良好なコミュニケーション」の上にこそ築かれ、また「人間関係を上手く処理できる」能力は、重要な社会的能力のひとつですので、組織全体のコミュニケーションやソーシャルリテラシーのレベルを上げることが根本治療解でしょう。

 

 そうは言っても人と人との間には、人格性の違い、価値観の違い、感受性の違い等々の違いからさまざまな軋轢や齟齬が生じるのが当たり前なのですから、やはり制度的・定期的に人と仕事の組み合わせ、人と人の組み合わせを変えることも必要です。

 

(3)人事制度の適正運用を通じて人と組織を適正に動機付けることができる。

 

 「人事諸制度はモチベーションの制度である」と言っても過言ではありません。特に目標管理制度や人事評価制度や報酬処遇制度は、どのように設計するかよりも、どのように運用するかで、人と組織のモチベーションを左右します。

 

<目標管理制度の適正な運用>

 ① 目標設定を通じて組織や企業の目的や価値が共有化されているか?

 ② 目標設定が上からの押し付け(ノルマ主義)になっていないか?

 ③ 目標設定が形骸化して毎年同じことの繰り返しになっていないか?

 

<人事評価制度の適正な運用>

 ① 人事評価が「組織への貢献度」と「組織的協働性」を軸に行われているか?

 ② 人事評価に信頼性・妥当性・納得性があるか?

 ③ 人事評価が適正にフィードバックされ、動機付けにつながっているか?

 

<報酬処遇制度の適正な運用>

 ① 「功の大きい人」に多くの報酬を、「徳の高い人」に高い地位を与えているか?

 ② 報酬と処遇に信頼性・妥当性・納得性があるか?(人事評価と同じ)

 ③ 年功序列の弊害や、情実人事の横行がないか?

 

(4)組織の活性化=満足度と意欲度のバランスをとりながら。

 

 以下は、組織構成員の満足度および意欲度の高低に応じた組織の活性化の状態を四区分したものです。モチベーションの機能を通じて人と組織を満足度と意欲度がともに高い活性型組織に導くことが人事マネジメントの重要な機能のひとつです。

 

  意欲度高・満足度高 … 活性型組織(頑張りが報われている)

  意欲度高・満足度低 … 奮闘型組織(頑張っているが報われない)

  意欲度低・満足度高 … 温室的組織(頑張らないが報われている)

  意欲度低・満足度低 … 不活性組織(頑張らないし報われもしない)

 

(留意点)

①自分の職場や組織が、満足度と意欲度を両軸とする四象限のいずれに属するかを、できれば外部機関によるアンケート調査等によって把握しておく。

②不満に耳を傾け、それを和らげる改善を行うことは有意義ですが、不満を解消したからと言って意欲が高まるわけではありません。

③仕事をする環境や条件に多少の不満があっても、仕事への興味や、仕事の達成感、仕事を通じた成果や評価や成長が得られるなら意欲は高まります。