民法改正のポイント

2019年ごろの施行

 

① 意思能力なき法律行為の無効(第3条の2)

 

 「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」ことが明記されました。「意思能力」とは、自分の行為の結果を弁識し判断できる精神的な能力のことです。

 

②  

 

 

 

 

 

① 債権の消滅時効について

 

 債権の消滅時効の起点や期間について、「権利を行使できる時から10年間」に加えて、新たに「権利を行使できることを知った時から5年間」も加わり、消滅時効が早まった。また、短期消滅時効が廃止され、上記の一般債権と同じ消滅時効が適用される。

現行法では,原則的な時効期間は,権利を行使することが「できる時」から「10年間」です。

改正法では,債権者が権利を行使することができることを「知った時」から「5年間」,

権利を行使することが「できる時」から「10年間」となります。

 

併せて,商法上の5年間の短期消滅時効は削除となります。

また,職業別の短期消滅時効(3年・2年・1年)は,

区別の合理性がなくなったとして廃止され,上記の原則的時効期間となります。

② 約款について

 

 企業が一般消費者等と定型的な取引をする際に使う約款について契約としての拘束力が認められた。また、約款の内容を変更する場合、合理性があれば相手方の個別の同意が不要となった。ただし、約款の内容について、社会通念に照らして消費者等を一方的に害すると認められた場合は契約の拘束力はない。

改正法では,「定型約款」として,

「定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって,

その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。)において,

契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。」と定義付けました。

そのため,事業者間の取引や雇用契約は対象外となり,

「事業者対消費者」の画一的取引に使われる約款のみが対象となります。

 

そのうえで,定型約款による契約の内容補充

(相手方の利益を一方的に害する条項は合意したものとみなされない)や,

内容の表示,変更についてのルールが明確にされました。

これに伴い,自社の定款も見直す必要があると思われます。

③ 保証契約について

 

 事業のための借入れの際に個人が保証人となる場合、保証人が事前に公正証書を作成して保証する意思を表示しないと、保証は無効となる。また、借入れをする主債務者は自らの財産状況を保証人に情報提供しなければならず、事実と異なる情報提供があった場合、保証契約を取り消せる場合がある。

他人の保証人になったばかりに,

借金を背負わされる「保証人の悲劇」が跡を絶たないことから,

改正法では「保証人保護」のための規定が設けられます。

 

まず,事業のための貸金等債務を主債務とする個人保証について,

経営者等(役員,過半数議決権ある者,

共同事業者・事業に従事する配偶者等)以外の保証については,

契約締結前1か月以内に作成した「公正証書」で保証意思を表示しなければ無効となるとされます。

「第三者保証」のハードルを上げるものです。

 

また,

保証人に対する情報提供義務(契約締結時,債務の履行状況,期限の利益喪失)

が明文化されます。

 

さらに,

個人がする根保証(保証債務の額が不確定なもの)は

種類を問わず一律に「極度額」(保証の上限額)を定めないと無効となります。

 

主として,金融実務への影響が大きいと考えられます。

根保証については,不動産賃貸借の保証人もそれに含まれるため,

今後は契約書で極度額を定めるように見直す必要が出てくるでしょう。

④ 債権者代位について

 

 債権者代位権を行使した場合でも、債務者は第三債務者に対し債権を行使し弁済を受領することができるようになる。そのため、債権者は、債権者代位権を行使して債権回収を万全にするには、事前に仮差押え等をしておく必要が出てきた

 

⑤ 法定利息について

 

 契約書で利率を定めない場合に適用される法定利率が5%から3%に変更になること、賃貸した場合の敷金は原則返還すべきことが明文化されること等、他にも企業法務に影響があるポイントは多い。 

金銭債務の不履行の場合に,当事者間で合意がなければ,法定利率による遅延損害金が発生します。

現行法の法定利率は「年5%」です。

昨今の低金利から高すぎると言われており,改正法では「年3%」となり,

さらに3年ごとに1%刻みで見直される「変動制」となります。

併せて,年6%とされる商事法定利率も削除となります。

 

6 賃貸借

 

改正法では,「敷金」に関する規定が設けられました。

また,賃借人は通常の使用・収益によって生じた賃借物の損耗や

経年変化の原状回復義務を負わないことが明文化されました。

いずれも,これまでの判例を明文化したものです。

認知症の高齢者が交わした契約は無効

 

 重篤な認知症の高齢者も、ここに含まれることになりますが、超高齢社会(65歳以上の高齢者が人口に占める割合が21%を超えた社会)を迎えて、上記意思能力に関するルールが重要となる中で、民法に明文規定がないのはおかしいということで、契約の当事者が意思能力を有しなかったときは、その契約は無効とする旨の規定を新設することになりました。つまり、従来と何も変わらないのですが、国民一般に分かり(やす)い民法という観点から、当然の原則を明文化したということです。

購入商品に問題があった場合の責任

 インターネットを通じて購入した商品が故障していた場合、民法では、売買契約を解除する、損害賠償を請求するという2つの方法が規定されています。要綱仮案では、この2つの方法に加え、「目的物の修補」の請求、「代替物の引き渡し」の請求、「代金の減額」の請求が規定されています。ネット市場での売買が一般化し、商品の現物を見ないで購入するケースが増えていることに対する措置と考えられています。

 なお、要綱仮案では、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」としています。民法で使用されている「瑕疵(かし)」(民法570条等)という難解な文言を使用せず、「契約の内容に適合しないもの」として、上記同様に、国民一般に分かりやすい民法を目指すという、本改正の趣旨を反映したものとなっています。

 

<参考>民法の一部を改正する法律案新旧対照条文