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1_6 採用ミスに気付いたら ☆

 

設問)内定後に「採用ミス」に気付いたらどうすれば良いか?

 

A1)「内定」を取り消す_内定期間中の解雇

 

 採用内定の法的性格は「始期付・解約権留保付労働契約」であるとする考え方が判例です。(最2小判昭54.7.20 大日本印刷事件)。企業の内定通知が候補者に届いた時点で始期付・解約権留保付労働契約が成立するということです。

 

 「始期」というのは「契約の効力が生じる時期」という意味で、例えば入社日が「*年4月1日」なら、その日の午前零時が「始期」です。「解約権留保」とは、企業側に一定範囲の解約権(解雇権)が留保されているという意味です。

 

 内定取消しは「内定期間中の解雇」にあたり、解雇権濫用法理(労働契約法16条)に服します。客観的合理性と社会的相当性がなければ法的に無効です。具体的にどのような事由があれば有効となるかは個々の事案によります。

 

 判例は、「採用内定当時知ることができず、また期待できないような事実であって、これを理由として取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的で社会通念上相当として是認できるものに限られる」としています。

 

  一般論としては、成績不良による卒業延期、採用条件としての資格試験の不合格、健康状態の著しい悪化、内定期間中の著しい背信行為、重要な経歴の詐称など、主に内定者の側に生じた重大な事由(理由)に限られるでしょう。

 

  内定者の側から自由意思に基づいて内定を辞退することには法的制約はありませんので、企業側が決定的な採用ミスに気付いたら、それを率直に内定者側に伝えるなどして内定者の「辞退」の意思を根気強く引き出す以外にありません。

 

A2)「本採用」しない_試用期間中の解雇

 

 内定期間と同様に、試用期間についても、「試用期間」の法的性格に基づく一定範囲の解約権が留保された労働契約がすでに成立しているというのが判例(三菱樹脂事件 最大判昭48.12.12 民集27-11-1536)の解釈です。

 

 試用期間中の解雇は、通常の解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認められるものの、企業が当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合で、解雇が合理的理由がある場合に限られます。

 

 試用期間中の解雇要件は、その後の解雇要件と区別して就業規則に明記すべきです。以下は東京労働局の規定例ですが、試用期間を十分にとり、具体的な解雇要件を追記し、これを厳格に運用すれば十分に有効で強力な規定になります。

 

 (試用期間)

第6条 労働者として新たに採用した者は、採用した日から *か月間を試用期間とする。

2 前項について、会社が特に認めたときは、この期間を短縮し、又は設けないことがある。

3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。

 

A3)遅くとも採用後1~3年以内に「何とかする」。

 

 試用期間は「最長6カ月」が多いようですが、「最長1年」まで延長できる旨規定し、その間に観察と評価とフィードバックを行い、本人にも改善の機会を与えながら、試用期間内に将来に向けた合意形成を行うべきです。

 

 採用後1年以内に合意形成ができれば、翌年度の採用市場への参入も不可能ではありません。大卒新人の3割以上が採用後3年以内に退職しているという現実から見れば、そのことも本人にとってさほど不利なことではありません。

  

 新卒者なら試用期間を含めて採用後2年間を「育成期間」と定め、評価や処遇や給与等の人事諸制度の適用は避ける方が良いでしょう。「採用ミス」をして試用期間を徒過したら、「育成期間」が「何とかする」最後のチャンスです。

 

<育成期間中の取り扱い:例>

① 人事評価制度は未適用とする。

② 資格体系上および役職体系上も未適用で良い。

③ 給与・賞与も学歴・卒年ごとに一律、昇給も一律で良い。

④ 目標管理制度も未適用。

⑤ ④に代えて「自己申告表-観察育成表」を使用すると良い。

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代表・特定社会保険労務士

河北 隆

〒270-1357

千葉県印西市牧の木戸1-7-4

mail    hrms@grace.ocn.ne.jp

一般企業や医療機関等での人事実務経験と特定社労士としての専門性に基づき、主に医療・福祉・介護分野の人事労務マネジメントを支援しています。

<資格>

特定社会保険労務士

衛生工学衛生管理者

情報処理技術者

医療労務コンサルタント

産業心理カウンセラー

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