人を見る眼、育てる眼

 

<以下ご参考:「人を見る目」「成長の指針」>

 

 以下はあくまで「人の成長度(もしくは未熟度)」を判別する基軸として、また「人の成長を支援する」という観点で…もちろん筆者自身の「こうありたい」という自戒として(他者への「他戒」では決してなく…

 

八観六験>

 

呂氏春秋より(「…」以下は筆者の自分勝手な意訳です。)

 

八観

「通則観其所礼(通ずれば其の礼する所を観る)」

 … 知って驕らないか?(無知を蔑まないか?)

「貴則観其所進(貴ければ其の進むる所を観る)」

 … 地位や権限に甘んじないか?(さらに自分を成長させるか?)

「富則観其所養(富めば其の養ふ所を観る)」

 … 困窮者に快く惜しまず施すことができるか?(また成長のために投資できるか?)

「聴則観其所行(聴けば其の行ふ所を観る)」

 … 知行合一、言行一致しているか?

「止則観其所好(止れば其の好む所を観る)」

 … オン&オフやワーク&ライフがバランスよく充実しているか?

「習則観其所言(習へば其の言ふ所を観る)」

 … 自分自身の考えや言葉になっているか?

「窮則観其所不受(窮すれば其の受けざる所を観る)

 … どんなに困った時でも他責化せず依存せず堕落せず自らに恃む気概があるか。

「賤則観其所不為(賤なれば其の為さざる所を観る)」

 … 地位が低くても貧しくても品格を保てるか?

六験

「喜之以験其守(之を喜ばしめて以て其のを験す)」

 … 調子に乗ってはめを外さないか?

「楽之以験其僻(之を楽しましめて以て其のを験す)」

 … 趣味や娯楽にも節度があるか? 

「怒之以験其節(之を怒らしめて以て其のを験す)」

 … 怒りのコントロールができるか?

「懼之以験其持(之を懼れしめて以て其のを験す)」

 … おそれてもおののかず。

「哀之以験其人(之を哀しましめて以て其のを験す)」

 … 共感性と宥恕のこころ。

「哀之以験其人(之を苦しましめて以て其のを験す)」

 … めげずに頑張れるか?

 

<達しては其の挙ぐるところを観る>

 

 退を好む者は廉謹にして恥を知る

 もし、これを挙げなば、志節いよいよ堅くして敗事あること少なからん

 奔競の者を挙ぐることなかれ

 奔競する者は能く曲げて諂媚 (てんぴ・こびへつらう) を事とし、

 人の己を知らんことを求む

 もし、これを挙ぐれば、必ず、能く才に矜 (ほこ) り、利を好み、

 累 (わずらい)、挙官 (その人物を推薦した人) に及ぶこと、もとより少なからざん

 その人、既に奔競を解すれば、またいずくんぞ挙ぐるを用いん

 

<資質>

 

『呻吟語』より

 

 深沈厚重なるは、是れ第一等の資質なり

 磊落豪雄なるは、是れ第二等の資質なり

 聡明才弁なるは、是れ第三等の資質なり

  

<斉家の箴・和顔愛語>

 

 和顔愛語を旨とし、怒罵相辱かしむるをなさず

 簡素清浄を守り、怠惰放漫を戒しむ

 小信を忽がせにせず、有事相済う

 親朋には事無くして偶訪し、時有ってか季物を贈る

 平生、書を読み、道を聞くを楽しむ

 

 『安岡正篤活学一日一言』より(致知出版社刊)

 

<宥恕_それ恕か>

 

『論語』より

 

 子貢問ひて曰く、

 一言にして以て終身之を行ふ可きもの有りやと

 子曰く、其れ恕か

 

 恕(じょ)= ひとのつらさ悲しさへの思いやりの心(筆者意訳)

 

<悪く思わず、悪く言わず>

 

 無道人之短 無説己之長…

 

 人の短をいうこと無かれ、己の長を説くこと無かれ。人に施しては慎みて念うこと勿か

 れ、施しを受けては慎みて忘るること勿かれ。世誉は慕うに足らず、唯だ仁のみを紀綱と

 為せ。

 後漢崔瑗の「座右銘」より

  

<参考 人は「行う」ことによって「その人」となる>

 

 ひとは建築することによって大工となり、

 琴を弾ずることによって琴弾きとなる。

 

 (アリストテレス『ニコマコス倫理学』から)

 

<別稿>

 

1.採用選考の「極意」は…

 

 筆者は職業柄、採用面接に携わることが多かったのですが、その際の「極意」は何か(究極的に言えばどういう人を採用すれば良いか?)と問われれば、「この人となら、一緒に、仕事をしたいと思える人を選ぶ」と答えます。

 

①この人となら 

 

 … やはりあくまで「人」を見る目が必要だと思います。安易な「人物論」には与したくありませんが、人の人格的要素(何をどのように感じ・思い・信じ・選び・行う人なのか)に、一定程度は立ち入る視点が必要だと思います。

 

②一緒に仕事をしたいと

 

 … 少なくとも企業や組織での仕事は「ひとりでする」ものではなく「一緒にする(協働する)」ものだからです。「仕事が、一緒に、できる、人」かどうか、そのような人格的要素を備えている人かどうかです。

 

③思える人

 

 … 残念ながら筆者にはお勧めできる「客観テスト」はなく、採用選考における面接や観察を通じて複数の面接者・観察者どうしで「感じ」「思う」ところを共有・検討・評価し合ううことをお勧めします。

 

2.一緒に仕事をしたいと思える人

 

①シェアしあえる人

 

 …どんな仕事でも、それ通じて達成しようとする意義や目的、実現しようとする価値があるはずです。そうした、仕事に対する意義観や目的観や価値観をより多く共有できる人と一緒に仕事がしたいと思います。

 

②コミットメントしあえる人

 

 …そしてその目的の達成や価値の実現に向けて「私は~します」という責任と実践を分かち合える人です。批評家が何人もいても、船頭ばかりが多くても困る。協働のベクトルに各自のベクトルを重ね合わせることができる人です。

 

③リスペクトしあえる人

 

 …一定の意義や目的や価値をシェアし、コミットし合える人どうしでも、各々が感じ・思い・信じ・選び・行うところそのものは、様々に異なるのが当たり前です。そこを肯定的に受容し、許容し、尊重し合えるかどうかだと思います。

 

<追記事項_人そのものより人の状態を見る眼>

 

1.その人を責めるのでなく、その人の「状態」に思いを至らせる。

 

 例えば上司が思うように動いてくれない部下がいる場合は、つい、その「人」のせいにしてしまいがちですが、その前に、その「人」がどういう「状態」にあるのか、動くに動けない「状態」にあるのではないか、ということへの思慮と想像を働かせるべきでしょう。

 

 「彼・彼女はそういう人だ」と「割り切って」しまうのは、拙速なのかも知れません。なぜ「できない」のか、どういう「状態」にあるからなのかを、その人の内部要因と外部要因を総合的に勘案すべきでしょう。

 

2.その人の「状態」を構成する要素として…。

 

 ひとつにはその人の内部的な諸要素、すなわち、能力や意欲、興味や関心、思考や感情、気質や性格、常識や習慣、知識や技術、こころとからだの諸状態があるでしょうし、さらには外部的な諸要素の諸状態、社会的な諸要素の諸状態があるはずです。

 

 つまり、その人はその「人」単独ではなく、上記の諸要素の諸状態と諸関係の中ではじめて存在し、思い、感じ、行うに違いないのですから、そのことへの思慮と想像、理解と配慮を欠いてはならないのだと思います。

 

3.その「状態」を少しでも良くするために何か支援できないか…。

 

 例えば「動かない」「できない」「判らない」部下を、「そういう人だ」と割り切り、切捨ててしまう前に、上司としては部下の「状態」を改善するために、どういう要素にどう働きかければ良いかにもっと思い至らせるべきでしょう。

 

 そこには努力や工夫次第で何とかなる要素と、ほとんどどうにもならない要素があるでしょうし、助言や指導次第で何とかなる要素と、ほとんどどうにもならない要素があるでしょう。そこをどう見極め、どう後押しするかが、例えば上司の役割なのだと思います。

 

<追稿_対語軸による人の判別法>

 

1.対語法(「人」を判別する軸として)

 

 これは心理学をふまえた実証的研究としてではなく、あくまで人事実務の経験に基づく発案ですが、採用面接におけるわずかなコミュニケーションを通じて、応募者の「人となり」を判別なら、その判別軸として、次のような「対語軸」が有効ではないでしょうか?

 

 ここで言う「人となり」とは、採用選考で判別すべき三つの適性(能力適性・資質適性・

指向適性)のうち、主として資質適性に関する適性判断の基準案です。応募者の性格やパーソナリティー上の特性を窺わせる要素です。

 

 あくまで、一般的に行われている採用面接でのわずかなやりとりを通じた「印象」の精度を少しでも上げること、複数の面接官の目線合わせを少しでも行うこと、将来の「問題職員」の問題に採用面接段階で「気付いて対応すること」を目的にしています。

 

  どちらが良いか、悪いかではなく、いずれか一方に極端な偏りがあるかどうかです。気になる項目にチェックしてください。

 

 ① 強と弱            

  □    言葉づかいや人あたりの強さと弱さ(やさしさ)   □

  □     自我・自己主張の強さと穏やかさ         □

  □        感情の激しさと穏やかさ          □

 ② 硬と軟

  □       ストレス耐性の強さと弱さ          □

  □         意思の強さと弱さ            □

  □       こだわりや粘りの強さと弱さ         □

 ③ 広と狭

  □        興味や関心の広さと狭さ          □

  □   いわゆる「ストライクゾーン」の広さと狭さ      □

  □           厳格と寛大             □

 ④ 動と静

  □           活動と思考             □

  □           攻撃と防御             □

  □           活発と抑制             □

 ⑤ 速と遅

  □          手早さと慎重さ            □

  □         即断即決と思慮深さ           □

  □           拙速と巧遅             □

 ⑥ 濃と淡

  □     大掴みか精緻か・大雑把か生真面目か       □

  □         広く浅く・狭く深く           □

  □          総合と専門              □

 ⑦ 直と曲

  □          単純と複雑              □

  □          原理と応用              □

  □          肯定と否定              □

 ⑧ 外と内

  □        外向き指向と内向き指向か         □

  □   陽と陰、能動と受容、行動と内省・開放と制御     □

  □        実証と思弁・帰納と演繹          □

 ⑨ 陽と陰

  □          陽向と日陰              □

  □          陽転と陰転              □

  □          活躍と支援              □

  

2.対語法のねらい

 

 対語(ついご)とは、善と悪、正と否など、誰にでもある正反対の資質特性をペアにした表現です。採用面接における資質適性の判定においては、資質をあらわすと思える対語を中軸に据えて、極端な偏りがないか、特に気になる項目がないかどうかを判定すべきです。

 

 決して応募者の全人格像を明らかにすることが採用面接の目的ではありません。あくまで「この人となら、ぜひ一緒に仕事をしてみたい」と、誰の目にも一般的に思わせる人かどうかを判定することが狙いです。

 

 また将来「職場(組織)の中の困った人たち」になるような資質上の極端な偏りや、アンバランスがないかどうかを採用選考の時点で判定しておくことが狙いです。(良い悪いということではなく、極端な偏りやアンバランスがないかどうかです。)

 

3.採用面接特に注視すべき性格的傾向について

 

 □ 社会的未熟性(幼少・学童期からの社会的人格の発達不全)

 □ 極端な自己愛的傾向、自己中心化傾向、自己肯定傾向

 □ 極端な他責化(他罰化)傾向または自責的(自罰化)傾向

 □ 極端な非協調性

 □ 極端な他者依存的傾向

 □ 極端な厳格化傾向または寛大化傾向

 □ 他者への興味関心、気づきや配慮の欠落

 □ 神経症的傾向

 □ 人格的な非統合性

 □ 非親和性

 □ 極端な演技的傾向

 □ 多動性障害傾向

 □ ・・・

 

 採用面接時に上記の傾向に気づくことは、「職場の中の困った(職場の中で困っている)人たち」の問題への「予防的対応」のひとつになるはずです。採用面接の時間や回数を惜しまず、心理テストを活用するなどして「気になることをそのままにしない」ことです。

 

<採用面接の時機を逸してしまったら…>

 

 採用後は雇用責任・育成責任があるので、マネジメントとしては「早く気付いて何とかする」以外にはなく、試用期間中から観察育成期間中、昇格昇進・管理職登用の機会に…OJTの機会に気付いて(気づかせて)何とかする以外にないのです。

 

 それにも気付かず、気付いても何もしないから問題が生じてから不用意な手を打とうとしたり、退職や定年を「解」にしてしまうのは、まさに「人事マネジメントの怠慢」としか言い様がありません。

   

<参考:性格的傾向の「ビッグ5」と経年変化>

 

 出典:「性格とは何か」(小塩 真司著・中公新書 p58)

 

   男女別の経年齢変化(10歳台・20歳台・30歳台・40歳台・50歳代の経年齢変化)

             男        女

 ① 外向性     ↘→→→→    ↘→→→→

 ② 神経症的傾向  ↘→→↘↘    ↗→↘↘↘

 ③ 開放性     ↘↗↗↗↗    ↘↗→↗↗

 ④ 協調性     ↘↗→↗↗    ↘↗↗↗↗

 ⑤ 勤勉性     ↘↗↗↗↗    ↘↗↗↗↗

 

 … 特に経験者採用において「年齢不相応な」未熟性や特異性はないでしょうか?

 また、本人は上記の性格的傾向の「ビッグ5」について、どのように自己認識(その成長

 過程を認識し、どのような言動や態度を意識的に選択)しているでしょうか?

  

<参考:YG性格検査における性格特性>

 

 出典:「性格とは何か」(小塩 真司著・中公新書 p136~138)

 

 <情緒不安定性因子>

 ① 抑うつ性(落ち込んだ気分や悲しい気分、罪悪感)⇔ 充実感や楽天的

 ② 回帰的傾向(感情の揺れ動きや気分の変わりやすさ、驚きやすさ)⇔ 冷静・理性的

 ③ 劣等感(人より劣っているという感覚、過小評価、優柔不断さ)⇔ 自身 

 ④ 神経質(心配症、不安定、いらいら、敏感)⇔ 情緒安定

 ⑤ 客観性の欠如(現実的でないことの空想、考え事)⇔ 現実的な思考

 ⑥ 協調性の欠如(不信や警戒心、閉鎖的な人間関係)⇔ 信用、開かれた人間関係

 <主導性や非内省性>

 ⑦ 愛想の悪さ・攻撃性(短気・怒りっぽい、意見を聴かない)⇔ 気長、聴き入れる

 ⑧ 一般的活動性(きびきび、動くのが好き)⇔ 動きが緩慢、効率が悪い

 ⑨ のんきさ(規則を気にせず、一緒に遊び、刺激を求める)⇔ 慎重、刺激を求めず

 ⑩ 思考的外交(細かいことを気にせず明るい見方、社交的)⇔ 几帳面で計画的 

 ⑪ 支配性(集団の先頭、リーダーシップ)⇔ 追従、受け入れ

 ⑫ 社会的外交(人付き合い、交流を楽しむ)⇔ 非社交的

 

 

  ここでも極端な偏りがあると見られる因子にチェックしてください。