1.「試験の点数」が「能力の尺度」ではない。
学校時代は「試験の点数」が「能力の尺度」であったかも知れませんが、少なくとも実務の世界で「仕事をする」上ではほとんど意味を持たず、またいわゆる「学歴」の別も、ほとんど実質的な意味を持ちません。
「仕事」とは、以下のように「情報処理のモデル」として説明できます。すなわちINPUT(得られた情報)からDATA(保有している情報)に基づいてOUTPUT(実現される価値)を生み出すPROCESSが「仕事」です。
与えられたINPUTから、豊富なDATAに基づいて、最も価値のあるOUTPUTを引き出すことがPROCESS(仕事)であり、これを、駆動Driveしたり制御Controlしたりする力が「仕事の能力Ability」です。
2.IQで特に重要なのは「論理性(合理性)」
ところで、筆者が見るところ、「知的能力=IQ」の中で、「仕事をする能力」に最も関連性が強いのは「論理性(合理性)」です。即ち、論理的(合理的)に理解し、論理的に思考し、論理的に説明し、論理的に行動する能力です。
「1+1=2」という「数理」に基づいてものごとを理解・思考・説明・行動しなければ仕事が成り立ちませんし、「AならばBである(なぜならば…、したがって…)」という「論理」に基づいてものごとを理解・思考・説明・行動しなければ仕事として通用しません。
これらは「当たり前」のことのように思われるかも知れませんが、実際には「論理が通らない」仕事ぶりが多いのが現実です。例えば「AはBですか?」という質問に「い いえ、CはDです。」という答えが返ってくるやりとりも現実にあります。
また、主語と述語が1対1に対応しない、5W2H(「Who誰が」「What何を」「Whenいつ」「Where どこで」「Why なぜ」「How どのように」「How much いくら、どれだけ」が明らかでないようなやりとりが多いのも現実です。
社会人、職業人としては、自分の言動について「説明責任 Accountability」がありますので、合理的に(合法的に、という意味も含めて)相手が納得するような理解、思考、説明、行動ができないようでは困ります。
3.EQ(情動的能力)とSQ(社会的能力)
ダニエル・ゴールマンは、次のような能力を「EQ(こころの知能指数)」として述べています。(「EQ~こころの知能指数」(ダニエル・ゴールマン著、土屋京子訳、講談社)
① 自分自身の情動を知る(自分が何をどう感じているのかを客観的に把握する)
② 感情を制御する(不安や憂うつや苛立ちを振り払い感情を制御する)
③ 自分を動機付ける(目標達成に向かって自分の気持ちを奮い立たせる)
④ 他人の感情を認識する(他人の感情をうまく受けとめる)
⑤ 人間関係を上手く処理する(他人との協調が必要な仕事をこなす)
よほどの天才的な芸術家でもないかぎり、「仕事をする」ということは「人と組織との協働関係を通じて仕事をする」ということです。「ひとりで仕事をする」ことにそれほど大きな成果も価値も評価も期待することはできません。
「人と組織との協働関係を通じて仕事をする能力」を、「SQ(社会的能力)」とすれば、「SQ=IQ×EQ」という式で表せます。すなわち、「IQの高さは、EQが高ければ高いほど、仕事をする能力の高さとして発揮される。」という意味です。
「SQ(社会的能力)」の中で最も重要な能力は「コミュニケーション能力」です。それは、単に「聴く」「話す」「書く」という能力に留まらず、「相手や周囲と協調し、その理解と協力を得ながら仕事をすすめる能力」を言います。
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