20230118
1.趣 意
医療や介護、福祉の業界に限ったことではありませんが、自らの事業と職制、働き方にマッチし、メンバーが納得できる労使や職場のルールを作り、それを「就業規則」へと落とし込んでいる事業所は、決して多くありません。特に、メンタルヘルス不調等の傷病による要療養の労働者の解雇を猶予する「休復職制度」は、就業規則に定めが置かれることによって関係者を法的に拘束しているのですが、法令があるべきルールを教えてくれていないため(それどころか、裁判所の判例もバラつきが大きく、流動的に見えます)、社労士や弁護士であっても、そのルールづくりや運用を苦手とする方が大多数でしょう。
しかし、昨今の職場トラブルや労働紛争のかなりの割合が、自分たちのものへと消化できていない就業規則とメンバーの認識・期待との間に大きなギャップがあること、とりわけ、ルールと言うには余りに抽象的で、行動の拠り所にもならない休復職制度の定めをめぐって発生しています。私、小島も理事を務める日本産業保健法学会は、このような積み残しの現場課題を解決する知恵を多職種(研究者、産業医、精神科医、産業看護職、心理職、人事労務担当者、社労士、弁護士等)による対話・交流によって紡ぎ出すべく設立されました。
“人事労務×産業保健×労働法務・・・”の総合格闘技である現代の労使・職場問題は、専門家に丸投げしては解決できません。当事者同士が「対話」することによってルールを作り、ルールを自分のものとするしかありません。外部の専門家がやるべきことは、チームの一員として、当事者同士の「対話」を支援することなのです。
今回は、不十分な就業規則の定めであっても、運用の仕方によってそれを補強する工夫、とりわけ、メンタルヘルス不調をめぐる労務・健康の管理や休復職制度を規律するプログラムづくりについて、ご紹介します。
2.発表者
鳥飼総合法律事務所 小島健一弁護士