20160917_協調性と協働性

 

1.遅刻者がいても定刻に会議を始めるか?(協働性あってこその協調性)

 

 例えば「会議には定刻までに集合して定刻に開始する」ということは、どのような組織や企業でも「当たり前」であるはずが、実際には例えば遅刻者を許容し、ある程度待って開始する」ことのほうが習慣化している例は珍しくありません。

 

 会議への遅刻を、誰も「当たり前」だとは思わないでしょうが、①遅刻者をある程度待って会議を始めるか、②遅刻者を待たずに会議を始めるかは、人によって考えが違い、組織によって習慣が違う、「協調性と協働性の分かれ目」かも知れません。

 

 「協調性」とは、ある面で「遅刻者をある程度待って会議を始める」行為であり、そうした寛容性や許容度が組織の潤滑油なのかも知れませんが、それは個々人が「会議定刻前に集合する」ことを「当たり前」とする「協働性」の上で成り立つことだろうと思います。

 

2.協調的共貧関係に陥ってはならない。(協調性が組織を損なう場合がある。)

 

 「チームワーク」と言えば、あたかも一人ひとり力の総和以上の力が発揮されるかのような印象を与えますが、「1+1が2を超える」ことはあり得ず、結局、チームワークとは「集団的サボタージュ(手抜き)を防ぐ」ことだと言うほうが良いのかも知れません。

 

 もっとも、「三人寄れば文殊の知恵」という言葉もありますので、相互に啓発し合って「1+1が2を超える」発想や知恵が生まれることもあるでしょうが、「話し合った」結果が結局は「陳腐」か「極端」に偏ることが多いことも社会心理的な実感です。

 

 筆者は「協調性」を否定しませんが、それが人間集団の「無関心」や「無理解」や「非協力」や「身勝手」や「無責任」や「サボタージュ」に同調するという意味なら反対であり、「自らの手間を惜しまず協力する」という意味の「協働性」に基づくものなら賛成です。 

 

<追記事項_20160918>「一票でしか変わらないのに一票では変わらない」と思う心理

 

 「選挙による民主主義」を是とするなら、自分たちの一票で政治を変えることができるのに、「自分の一票ではどうせ変わらない」と思ってしまい、その一票を投じる「自分の手間を惜しむ」心理は、「集団的サボタージュ」の現れのひとつでしょう。

 

 思えば「選挙による民主主義」が「英雄期待感」や「ファシズム」に転化してしまう心理も、「集団的サボタージュ」の現れのひとつかも知れません。組織的協働性は、「自分の手間を惜しまない」人々の行動によって支えられていると実感します。

 

<追記事項_20160918>「二者択一」の積み重ねの結果として今がある。

 

 「遅刻者がいても定刻に会議を始める」かどうかは「二者択一」のひとつであり、「協調性」と「協働性」の分かれ目のひとつだろうと思います。そこでトップやリーダーが「よし、始めよう」と言えばそれが組織の価値や習慣の形成につながるでしょう。

 

 トップやリーダー自身が遅刻者である場合は、おそらく「会議に遅刻する」ことがその組織や企業の価値や習慣になるでしょう。結局のところ、価値や習慣、リーダーシップやマネジメントとは、複雑難解な議論などでなく、ごく日常的な「二者択一」の積み重ねなのでしょう。

 

3.協働性を人事マネジメントの基軸に

 

 ところで、上記のような「協働性」というキーワードを主軸に、企業における採用から退職までの人事マネジメントを再編できるのではないか、というのが筆者の最近の問題意識です。(「人事の七つ道具」も併せてご参照下さい。)

 

①採用選考要素としての「協働性」

 

 筆者は採用における選考要素として、①資質適性、②能力適性、③指向適性、④行動適性の4つの適性を挙げていますが、これらの要素を貫くのが「協働性」= 「この人なら一緒に働いてみたいと思える人」という属性です。

 

 例えば資質面や行動面では協働性に馴染まないような未熟さや偏りはないか、能力面ではコミュニケーションを通じて周囲の理解や協力を得られるか、指向面では組織的協働を通じて価値を生み出すことに動機付けられているか、などです。 

 

②育成および目標管理における「協働性」

 

 企業における「育成」=「人の成長の促進」の主軸も「協働性」に収れんさせて良いと思います。再三引用しますが、筆者の部下が「仕事ができるようになる、ということだけではなく、仕事を通じて人間的にも成長したいと思う。」と言ったのはこの趣旨です。

 

  また、よほどの天才や芸術家でもない限り、仕事上でのより良い成果は、より良い組織的な協働を通じてこそ得られる場合がほとんどです。MBO目標管理における設定目標も、組織的な協働(理解・支持・協力)を最も多く引き出した結果、達成されるはずです。

 

③評価における「協働性」

 

 筆者は人事評価における評価要素として、①職務遂行上の態度、②職務遂行上の能力、③職務遂行上の実績の3つの要素を挙げています(「人事の七つ道具」参照)が、これらの要素を貫くのも「協働性」という要素です。

 

 態度については「組織的な協働を促進する職務遂行上の態度」の現れを評価し、能力については「組織的な協働を通じて成果をあげる能力」の発揮を評価し、実績については「組織的な目的の達成や価値の実現への貢献度」の多寡を評価すべきです。

 

<追記事項_20170319>アドラー心理学に学ぶこと~共同性の認識~

  

 「仕事をする」上でも人の言動や態度のベースが「共同性(「組織協働性」または「社会共同性」と言っても良い。)」の認識で貫かれているかどうか、ということは、たいへん重要な要素のひとつであると思います。

 

 企業組織の中でも、自分の便宜や利益や保身を優先させるような人は現実に居るのは驚きですが、社会や企業組織全体の利益よりも、自分の組織の都合を優先させる「小管理職」のビヘイビアは、むしろ日常的なのかも知れません。

 

 筆者は企業の人事管理という職業柄、特に人事異動の場面で「優秀な人を広く大きく育てようとせずに自分の部署に抱え込む」「自部署の不手際を他部署のせいにして事足れりとする」などの「小管理職」のビヘイビアに悩まされたことが多々あります。