4.自分自身を、仕事と、それを通じた成長に動機づけてほしい。

 

4_1 仕事を「作業」にしないでほしい~「良い仕事」をしようとすること~

 

 上司の立場から部下の仕事ぶりを観察していると、その仕事本来の目的や目標や意義を見失ったまま、ただその仕事を「作業」としてこなしている(「作業」に安住している)ように見える人がいるのが気にかかります。

 

 どのような仕事にも、仕事全体として見れば、達成しようとする人間的・社会的目標や、実現しようとする人間的・社会的価値があるはずです。分業による協業によって個々人の仕事は細分化されてはいますが、仕事全体(自体)の目標や価値は共通であるはずです。

 

 また、筆者自身は「仕事は作業ではなく、ソリューションである」と確信しています。何らかの目標を達成し、価値を実現するために、さまざまに生起する現実的な障害や課題を試行錯誤や悪戦苦闘を通じて何とかして解決して行くのが仕事です。

 

  労働法の世界では「指揮命令に従って労務(=作業)に服し、賃金を得る」ことが「労働」の定義ですが、おそらくわれわれの人生で最も健康的で輝かしい時間を「労務(=作業)」や「賃金」のために費やしてしまっていいはずがありません。

 

 どうか、自分の仕事を作業と思わず、たとえそれが細分化された部分であっても全体の目標や価値を見失うことなく、「より良い仕事をしよう」「より良く仕事をしよう」と自分自身をオリエンテーション(方向付け)し、モチベーション(動機付け)して下さい。

 

4_2 仕事を「作業」にしないでほしい~「仕事を通じて成長しよう」とすること~

 

 前述のとおり、「仕事をする」ということの本質的に重要な意味のひとつは、それが人間的・社会的な目標を達成し、価値を実現したりすることであり、もうひとつはそれが社会的・組織的協働を通じて行われ、それを通じて人の成長が促進されるということです。

  

 筆者のかつての部下のひとりは「自分の成長を感じることこそが自分にとって最大の動機付けです」と言い、もうひとりは「仕事が出来るようになる、ということだけではなく、仕事を通じて人間的にも成長したい」と言いました。

 

 筆者は「人事」という職業柄、いろいろな企業のトップ経営者と身近に接する機会が多かったのですが、その人格的な重厚さや高潔さを感じることが多く、やはり「地位が人を育てる」とはよく言ったものだなあと思いました。

 

 よほどの天才でもないかぎり、「ひとりでできる」仕事などありえず、「仕事」とは「組織的協働」そのものであり、仕事の成否は、人と組織からいかに多くの理解や協力を引き出すか、なのですから、「仕事の力」とは結局、その人の「人間性=人格」の力なのです。

 

 どんな仕事であってもそれを通じて「人が育つ」要素があるはずです。「より良い仕事をしよう」「より良く仕事をしよう」と日々日常の研鑽をつむことを通じて、「自分自身を成長させること」を忘れないで下さい。 

 

<追記20160121>自分自身の成長に向けて自分自身を内発的に動機づける

 

 旧い世代の人には「動機付け」と言えば「パブロフの犬」を連想してしまう人がいるかも知れませんが、人間は犬ではありませんし、「餌」によって外部的に動機付けられているわけでもありません。

 

 今の世代の人にも子供のころ、「叱られるから勉強する」という思いを経験した人がいるかも知れませんが、そんな動機付けで勉強したことが身に付き、役に立つはずがないことは誰に聞いても確かです。

 

 しかし現代社会で「働いている人々」の中にも、「働かざる者食うべからず」(働いて賃金を得なければ食いっぱぐれる)という呪文に縛られるようにして働き、職場でのおしゃべりやたまの休日・余暇を最大の楽しみにしている人は少なくないように思います。

 

 ワークワイフバランスという言葉は、ライフのためのワークであるはずが、逆にライフを損ねてしまうようなワークにもなりうるという「疎外状況」が、これだけ生産性の向上した現代において未だに解決できないでいる証左であるような気がします。

 

 かつて筆者の部下のひとりは「自分の成長を感じることが、仕事への最大の動機付けです」と語り、他のひとりは「仕事が上達するだけでなくて、仕事を通じて人間的にも成長できるようにしたい」と語ってくれました。 

 

 人間にとって「働く(仕事をする)」ということは、人間自身にとって、人間社会にとって、目的を達成し、価値を実現するための、組織的・社会的協働であるはずであり、それを通じて人間的・社会的に成長することであるはずです。

 

 「より良い仕事をしたい」「それができる自分自身に成長したい」「それを通じて人間的にも成長したい」という内発的動機付けが一般的であるような組織や社会にすることは、現代の生産力をもってすれば十分可能であるような気がします。  

 

4_3 目標をもって仕事をしてほしい~MBO目標管理の本当の意味~

 

 MBOとはManagement By Objectives & Self Control の略称であり、わが国では「目標管理」と訳されてしまっているせいか、いわゆる「ノルマ主義」的な誤った運用が行われていることが多いようであり、たいへん残念です。

 

 つまり、例えば「目標」が「数値万能」(例えば売上額の目標)であり、かつ組織の上から下への「押し付け」であり、目標設定や実行計画において上司-部下間の合意形成が行われていない、というような運用ではないでしょうか?

 

 MBOの「 Objectives 」は「目標」というよりは、「方向付け(オリエンテーション)」や「動機付け(モチベーション)」の「対象( Objectives )」という意味であり、仕事(=組織的協働)を通じて「そうしたい(そうありたい)」ところの「状態」を言います。

 

 それは必ずしも「数値」で表現できるものに限らず(「~という状態にしたい」という「状態」)、組織的協働においてメンバーが共有し、自発的にコミットメントし、上司(評価者)と合意形成すべきものです。

 

 自分の仕事が「今現在どういう状態にある」か、それを「いつまでにどういう方法でどういう状態にしたい」かを、必ずしも数値化することに拘り過ぎないで、上司(評価者)との間や他のメンバーどうしで話し合ってみて下さい。それが「目標」になるはずです。